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特集文春マルシェ

“ツマミ”と“おかず”の違いとは? 合鴨ロースとほんのり甘いポートワインの幸せ

文春マルシェ「美味随筆」〜お取り寄せの愉しみ#10 酒の“ツマミ”〜

2020/12/19

 食は人の営みを支えるものであり、文化であり、そして何よりも歓びに満ちたものです。そこで食の達人に、「お取り寄せ」をテーマに、その愉しみや商品との出会いについて、綴っていただきました。第8回は銀座・日比谷・先斗町スタア・バー店主の岸久さんです。

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 私はバーテンダーで東京・銀座で長年バーを営んでいる。バーの中には料理を出す店もあるが、やはりバーではツマミである。昔お洒落な雑誌で、バーのマスターが教えるツマミ企画で3年ほど連載したのだが、編集者によく言われたのが「岸さん、これはおかずになりますね!」だった。恥ずかしながら私には“ツマミ”と“おかず”の区別が無いようだ。強いていえば量だろうか。少しだとツマミで沢山あるとおかず。

 文春マルシェを探索するにはジャパニーズウイスキーのオンザロックが良い。行ったことのある所、知らぬ土地。気になる商品をクリックして、産地の風土と珠玉の品々の味覚を想像しながらウイスキーを飲む。ツマミとは案外こうしたものかと思った。そうして探索して選んだ品が届いた。喜び勇んで包装を開く私。“ツマミ”と“おかず”である。

 まずは、プレミアム合鴨ロース。

 重い。包みも立派なら紙箱も玉手箱みたいだ。これは贈答にも良さそうだ。たっぷりの出汁の中のロースは予想外に大きく、胸の抱身から手羽の元あたりまでの塊だ。メーカーおすすめの食べ方どおり薄めにスライスして、出汁をたれにしつつ、同封されている粉山椒に白髪ねぎを加えていただいた。上品である。

プレミアム合鴨ロース

 合鴨は自分でも幾度となく焼いたことがあるが、とにかく脂の量が多い。しかしこの合鴨ロースはしっとりしているが脂っぽくない。特徴は、焼いて脂を落とした後に出汁で煮ているのか、熱の入り方がどこの部分も良いのと、この出汁そのもの。端から切って中程に近づき、身が厚くなるそこら辺をまた分厚く切って、湯で熱くした備前焼の皿において温める。出汁大匙4杯位を小さなフライパンで煮詰めてソースにして辛子を添えた。ほんのり甘いポートワインといただく。ウーン、美味である。

 ふつふつと食欲が湧いてきたところで、鴨せいろにすることにした。ロースでない部位もたっぷりとあってありがたい。まず、皮や周りのお肉をカットして正味のロースにする。ロースの皮目をフライパンでもう少し焼く。ロースを取り出しスライスして皿に盛る。そのフライパンで白ネギも焼く。周りのお肉は細かくカットしてフライパンで炒める。香ばしくなってきたら出汁を投入して煮る。少しだけ濃縮つゆで味を調えて、つけ汁完成だ。蕎麦をゆでて冷水でしめる。ローススライスは、その都度つけ汁に入れながら蕎麦をたぐるのだ。この鴨せいろは正真正銘プレミアムな一品であった。