昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載近田春夫の考えるヒット

King GnuとNiziUで考える、jpopに“一貫する何か”――近田春夫の考えるヒット

2020/12/23

『千両役者』(King Gnu)/『Step and a step』(NiziU)

絵=安斎 肇

 一口にjpopというが、そこに全体を通じての“一貫する何か”はあるのだろうか?

 例えば今週の二組である。片や、芸大でチェロを学んだ男の率いるロックバンド。一方は韓国で培養された女子のグループと、出自ひとつとっても両極端といっていい。

 そこで両者の曲調に似たところを探したが、やはり歌詞が日本語なぐらいで、他には何もないようにさえ思われた。

 すなわち、双方第一義とは自ずから「日本語との親和性の良さ」を目指すことなのかどうかはさておき、jpopとは、スタンスはともかく、それぞれが海外ではなく日本語圏に市場を定め戦略を展開する商品なのだと。誰の目にも明確なのはそこだけだろう。

 ところで言語と音楽傾向の関係性については、ジャンルは同じく“歌劇”といえど、ドイツ産とイタリア産では舞台から受ける印象も随分と異なることからも分かるように、コトバは思った以上に影響を音に及ぼすものなのである。

千両役者/King Gnu(ariola)作詞・作曲:常田大希。「docomo 5G」CMソング。常田氏はギター/ボーカル担当。東京藝大音楽学部器楽科中退。

『千両役者』を再生すると、耳に飛び込んでくる歌詞――全編聴き取りは私には無理でした――の断片、その意味や音響が、旋律や和声との相乗効果もあり、イメージ/光景を、脳に突きつけてきた。

 これぞ、普段から日本語で生活をしている我々こそ味わうべき“醍醐味”に他ならぬ。

 それにしてもなんと歌っているのか。昔は音源に付いてくる歌詞カードを見る以外に知るのも大変だった(すなわち有料)。今やそんなものネットでタダだ。ありがたい。ひょっとして、最近は歌詞の聴き取りにくさがさほど取り沙汰されぬのも、その恩恵に与るところだったりして?

 さて『千両役者』の歌詞に触れる前にひと言。C/W曲の題が『三文小説』とはこりゃあ“洒落”が利いてますな。

 この歌詞を目の前にして、日本語生活の大きな喜びのひとつに「活字を見る愉しみ」がある。今までも原稿を書くため歌詞は色々確認してきたが、そのような観点から考察や感想を持ったことの一度もなかったことに気付かされた。

 漢字ひらがなカタカナ表意表音入り乱れ、またなんと読んで良いのやら分からぬ表記の箇所もあったりと、眺めやなかなかに“華やか”なのだ。

 その視覚的な効果の面白さも手伝って、内容を追ってゆくと今度は、文章としての完成度の高さにも目がいく。なにせ“未解決なまま”という箇所が、一欠片たりともない。連なるコトバ――語彙にしろレトリックにしろ――への“選択の動機”には確固たる信念や目的が窺え、常田大希の胸の裡では“千両役者”とは何のメタファーなのか? 読めばクリアにたちまち見えてくる“寸法”なのである。

 この激動の世に、それこそ歌は連れるのだろうかしらん。

 ただjpopには、今回の文章表現のごとく“読み応えのある歌詞”の、より求められてゆく気のしないでもない、令和2年の師走なのであった。

Step and a step/NiziU(EPIC)オーディション番組「Nizi Project」から誕生したガールズグループ。韓国の大手事務所JYP Entertainment所属。

 NiziU。

 これ全員日本人ってことで、定義はjpopでいいのよね?

今週の発見「スーパーマーケットで売ってるたまごって、だいたい丸い方が上、尖ってる方が下になって、パックに並んでいるよね」と近田春夫氏。「ところが最近、上下ともに尖ってるラグビーボール型のたまごがあることに気づきました。鶏卵業界がひそかに上下対称を目指しているのか、はたまた個体差なのか。そう感じているのは私だけでしょうか?」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

この記事の写真(3枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー