アメリカ大統領選挙はバイデン氏の勝利で終わりました。
トランプ大統領は、票の集計に不正があったと法廷闘争に訴える構えですが、さすがにこれは通らないでしょう。いくら最高裁判所に保守派の判事が多いといっても、「数字」という事実がある以上、どうにもならない。このあとトランプ大統領にできることといえば、任期満了後も軍隊を動員するなどしてホワイトハウスに居座り、国を二つに割って徹底抗戦を続けることです。そうすればわずかながら生き残れるチャンスはある。
しかし、彼の性格から言ってそれはしないでしょう。トランプ大統領は本当に怖いことはできない人物です。
今後、起きる可能性があるのは、脱税容疑によるトランプ大統領の訴追です。トランプ大統領は、カーター大統領以来慣例となっている納税記録の公表を拒み続けてきましたが、無理な“国策捜査”などしなくても、法規を適正に執行すれば済む話ですから、トランプ大統領は財産を身ぐるみはがされ、名誉も失墜し、訴追されるという異例の大統領になるかもしれません。
いずれにせよ、トランプ大統領はもはや過去の人であり、政治の表舞台から消えたと見て間違いないでしょう。
バイデン大統領就任で高まる米中、米朝の緊張
しかし、トランプ大統領が消えたから世界に平和が訪れるかといえば、話は逆です。いずれ世界は、トランプ大統領の時のほうが米中関係は安定していたと思うでしょう。トランプ大統領は過激で攻撃的な発言を繰り返しますが、いざとなれば必ずディール(取り引き)を持ち出します。
むしろバイデン氏が大統領になった時のほうが怖い。「ウォールストリートジャーナル」(2020年7月27日)も社説で書きましたが、中国が問題だというのは、トランプ大統領の選挙対策として見るべきことではなく、ブルーワーカーからインテリまで、すべてのアメリカ人の共通認識なのです。
たとえバイデン氏が大統領になっても中国への厳しい姿勢は続くでしょうし、もともと価値観外交をする民主党政権のほうが、アメリカ型のルールを守れと強く出る可能性が高いのです。そうなると、中国との対立はのっぴきならないものになるかもしれません。