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「公文書改ざん再調査を」自死職員の妻のキャンペーンが「チェンジメーカー・アワード」大賞受賞

赤木雅子さん「夫はなぜ自死に追い込まれたのか? 真実が知りたい……」

2020/12/23
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「夫はなぜ自死に追い込まれたのか? 真実が知りたい……」

 森友学園への国有地値引き売却を巡り、公文書を改ざんさせられ命を絶った財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さん。その妻、赤木雅子さん(49)が真相の再調査を求めてキャンペーンサイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で始めた署名活動が、同サイトでこの1年を最も象徴するキャンペーンを表彰する「チェンジメーカー・アワード」の大賞に選ばれた。

手記には「すべては佐川理財局長の指示です」

 チェンジ・ドット・オーグは、世の中を変えたいという気持ちを持つ誰もが、ネット上で賛同を募るキャンペーンを始められるサイトで、全世界で4億人余りが利用しているとされる。チェンジメーカー・アワードは、今年11月末までの1年間に日本で行われたキャンペーンのうち、ノミネートされた36件から一般の利用者が3つを選び投票する。2度目となる今回は8000人以上が投票し、赤木雅子さんの「改ざん再調査」キャンペーンは3497票と、投票者の4割以上という圧倒的な支持を集めて大賞に輝いた。

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 赤木雅子さんがこのキャンペーンを始めたのは今年3月。夫の俊夫さんが、改ざんについて知りえた経緯を死の直前に「手記」として書き遺していたものを、「週刊文春」誌上で全文公表した。同じ日に、真相解明を目指して国と、改ざんを指示したとされる佐川宣寿元財務省理財局長を提訴したのがきっかけだった。

手記全文公開した週刊文春を遺影の前に供える(筆者撮影)

 手記には「すべては佐川理財局長の指示です」などと数々の新事実が記されていたが、当時の安倍晋三首相や麻生太郎財務大臣は「新事実はない」「再調査は必要ない」と突っぱねた。これに雅子さんは「悲しすぎます……」と胸の内を明かし、それならとチェンジ・ドット・オーグで再調査を求めるキャンペーンを始めた。

「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」

わずか2日足らずで15万人が署名

 その呼びかけに賛同の声が次々に寄せられた。

「国のために働いた一人の人間の死の真相を知りたいという思いを汲みとれる社会であってほしいと思います」

「事実が闇の中に入り、まったくわからない。政府が全て白日のもとにさらすことを要求します」

 開始からわずか2日足らずで賛同の署名者は15万人を突破。過去最速の勢いでサイトの運営担当者も驚いた。さらに賛同者は伸び続け、今では37万人に達している。もちろん国内で過去最多の記録だ。今年6月、雅子さんの弁護団はこの署名をプリントアウトして段ボール5箱分を首相官邸に届けた。それでも政府の対応は変わらなかった。安倍氏の後を継いだ菅義偉首相も、言うことは判で押したように同じ。「調査は尽くした」「新事実はない」「再調査は必要ない」……そんなになかったことにしたいのか?

段ボール5箱分の署名を首相官邸宛に提出(弁護団提供)

 12月15日午後2時前、東京・永田町の首相官邸、正面玄関前。警備の警察官が大勢立っている。そこに赤木雅子さんの姿があった。チェンジメーカー・アワードの大賞に決まったことを受け、チェンジ・ドット・オーグがビデオメッセージを求めてきた。それをこの場所で撮ろうと決めたのだ。雅子さんを追い続けている映像ドキュメンタリー作家の久保田徹さん(24)と、相棒の俳優、今野誠二郎さん(23)がカメラを回す。雅子さんは官邸を背後に歩道上に立って語り始めた。