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2021/01/06

続々と接種、開発が進むが、有効性はまだ未知数

 アデノウイルスのワクチンも研究の歴史は長く、エボラウイルスワクチンで承認された製品もあるが、まだ投与実績は少ない。細胞に送り込みやすいのが利点だが、すでにアデノウイルスに感染したことがある人には免疫があるため、効きにくいとされる。

 そこで、人には免疫のないチンパンジーのアデノウイルスを使ったり、異なる種類のアデノウイルスを組み合わせ、2回に分けて接種するようにしたりと、各社が工夫している。

 ガマレヤ研究所のワクチンは、まだ小規模の臨床試験しか終えていなかった8月に、ロシアで世界に先駆け「承認」され、物議を醸した。カンシノのワクチンも、中国ですでに軍の要員に限って使用が認められていると報じられている。

 第三相試験にはさらに、従来型の不活化ワクチンを開発する中国の製薬企業シノバック・バイオテックとシノファームの2社、「組み換えタンパク質」という別の従来型ワクチンを開発する米国のノババックスも取り組む。

 早ければ20年内にも米国などで第1号のワクチンが承認される可能性があるが、その有効性はまだ未知数だ。

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承認プロセスを短縮することで「何かを諦めている」

 米食品医薬品局(FDA)が示す新型コロナワクチンの指針では、接種した人の少なくとも50%で、発症や重症化を予防できることを求めている。

 この条件について、冒頭の石井教授は「医学的にこれはダメだと言われない最低限のレベル。承認を見越して製造を始めた企業もある中で、ハードルを高くして使えるワクチンがなくなるというリスクを避けたのだろう」とみる。少なくとも初期のワクチンの予防効果については、過度な期待は禁物だろう。

 最も気になるのは安全性だ。過去には、大規模な臨床試験を経て承認されても、市販後に重篤な副作用が出て接種が中断されたワクチンが幾つもある。

 片山和彦・北里大学教授(ワクチン学)は「通常は承認プロセスだけでも2年ほどかかる」と指摘したうえで、「これだけ短縮しているということは、通常の試験で確認している基準のうち、何かを諦めているということ。承認直後の接種は事実上、第三・五相臨床試験の様相となる。ある程度の副反応の発生は覚悟する必要があるだろう」と懸念する。

 日本政府は、接種による健康被害が生じた際に救済措置を取ったり、損害賠償をしたメーカーに損失補償をしたりできるよう、法的措置を講じる方針だ。