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2021/01/06

 ワクチンの効果がどれほど持続するかも未知数だ。自然感染した患者では、数カ月で抗体が検出できなくなった例も報告されている。前述の森下教授も「ワクチンは効果が持続するように設計するもの。1年は持つのではないかと言われている」としつつも「実際どうなるかはまだ分からない」と認める。

自国優先の「ワクチン・ナショナリズム」に集まる批判

 開発競争と並行して、先進国の間ではワクチン争奪戦も過熱している。

 日本政府は、ファイザーとアストラゼネカからそれぞれ1.2億回分の供給を受けることで基本合意。ノババックスのワクチンも、武田薬品工業が国内で年間2.5億回分以上を生産する体制を整備する予定だ。モデルナとも5000万回分の供給を受けるという契約を結び、合計すると5.4億回分に上る。

 仮にすべての供給が実現すれば国民1人あたり4回接種できる計算だが、厚生労働省の担当者は「どのワクチン候補も成功するとは限らない。確保を目指すには手段を増やすしかない」と説明した。

 米国や欧州連合(EU)、英国、カナダなどもそれぞれ主要な開発企業と交渉を進めるが、自国優先のこうした動きは「ワクチン・ナショナリズム」と呼ばれ、批判や懸念の声も挙がっている。国際協力団体オックスファムは20年9月中旬、「世界人口のわずか13%にあたる富裕国が、主要なワクチン候補の予定生産量の半分以上を囲い込んでいる」と指摘。仮に最も開発が進む5種類のワクチンすべてが実用化に成功したとしても、世界の3分の2の人々は22年まで接種することができない、という試算を示した。

©iStock.com

WHOの訴え「ワクチン・ナショナリズムはパンデミックを長引かせる」

 その一方で、世界中に平等にワクチンを分配するための国際的な取り組みも始まっている。WHOなどが主導する「COVAXファシリティ」は、高・中所得国の拠出金でワクチンを共同購入し、途上国にも行き渡らせる枠組みで、21年末までに少なくとも20億回分を供給することを目指す。

 20年8月下旬時点で日本を含む172カ国が参加を表明。態度を保留していた中国も10月9日にようやく参加を発表したが、米国とロシアは不参加で、国際協調の足並みは揃っていない。

 WHOのテドロス・アダノム事務局長は、9月4日の記者会見でこう訴えた。

「もし有効なワクチンができたら、有効に使わなければならない。ワクチン・ナショナリズムは、パンデミックを短縮させるのではなく、長引かせるだろう」

追記(2021年1月5日):

本稿執筆後、モデルナとファイザー/ビオンテックはそれぞれ、両者が開発したワクチンの有効性が90%超と高く、重症患者を減らす効果もみられたと発表。2020年12月には、ファイザー/ビオンテックのワクチンの接種が、承認を受けた英国、カナダ、欧州連合(EU)、米国などで始まり、モデルナのワクチンの接種も米国で開始した。ファイザー/ビオンテックのワクチンについては、WHOも12月31日に緊急使用を承認。日本でも承認申請がなされており、早ければ今年2月中にも結論が出る見通し。アストラゼネカ/ハーバード大学が共同開発したワクチンも、12月30日に英国で初めて承認され、年明けの1月4日に接種が始まった。

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