「復興のシンボル」9年の活動に幕 きずなキャラバンのフラガールが引退―福島
東日本大震災直後から復興を応援し続けたフラガールが27日、引退した。9年間の活動を終えた温泉施設「スパリゾートハワイアンズ」(福島県いわき市)のダンシングチームキャプテン、アウリイ晴奈=本名鈴木晴奈=さんは「『復興のシンボル』と言ってもらうこともあった。自分たちにできることを発信すれば前向きになれる人がいる。つらいときこそ手を取り合って頑張ってほしい」と後輩にエールを送った。
アウリイさんがハワイアンズに入社したのは、1カ月前の大地震で休業中だった2011年4月。全国各地を巡ってダンスを披露する「きずなキャラバン」で活躍する先輩の姿をテレビで追いつつ、レッスンに励む日々。「いつデビューできるんだろう」。不安が拭えなかったという。
西日本豪雨の被災地を元気づけようと、19年6月、再びキャラバンが始まると、キャプテンとして広島、岡山両県など20カ所を行脚した。少しでも元気を届けたい―。そんな思いで熊本県の仮設住宅へ向かったが、道中、崩れ落ちた山の斜面が目に入り、「みんながつらい生活を送っているのに華やかな衣装を着て笑顔で踊っていいか」と戸惑いを感じた。
受け入れてもらえるのか―。だが、会場で待っていたのは、「ようこそ」と書いた画用紙を手にした被災者の笑顔だった。「この時間だけでも楽しんで。福島も復興に向け頑張っている。一緒に前に進みましょう」。ダンスに力が入った。
今年、新型コロナウイルス感染拡大でハワイアンズは4月から3カ月間休業を余儀なくされた。あの日の自分と同じ不安を抱えた新人に「デビューできる日は絶対に来る。力を合わせて頑張ろう」と声を掛けたアウリイさん。無事デビューした後輩の姿を見て、引退を決めたという。
アウリイさんは最終ステージを終え、「かけがえのない9年8カ月だった。想像していた以上にいろいろな経験をして成長することができた」と振り返り、「フラガールは宝物」と涙を浮かべていた。
