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2021/02/19

社員を活かす「安心感」

 しかし、ある時期を境に、「若手社員が見違えるように働いている」という嬉しい報せが届くようにもなりました。

 この変化の背景には、リモートワークがもたらした「職場の三密」からの解放と、その帰結としての「安心感」の醸成があると考えられます。

 精神医学的に解説すると、人間が創造性を発揮するにあたって何より必要なのが「心理的安全性」、つまり安心感です。

 人間は、安心安全を感じる状況においてはじめて、本来有する能力を十分に発揮することができるようになります。

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 リモートワークによって一部従業員の労働生産性が明らかに向上したのは、他でもない、「安心感」がその人の潜在能力を引き出したからなのです。

最強の「信頼ベース」の管理

 実のところ、さきに述べたような変化は、コロナ禍に先立って18年に成立、19年より施行が始まった「働き方改革関連法」において既にその萌芽がみられるものでした。

 改正法の核となる要素は、「多様で柔軟な働き方の推奨」、そして「個々人がそれらを自由に選択できる」という点であり、これはまさに職場における「安心感」の醸成と軌を一にするものです。

 ここでいわれている「多様で柔軟な働き方」と「自由な選択」について、これを阻んでいたものこそ、職場における「距離」の問題でした。「人間関係における心理的・物理的距離」と言い換えてもよいかもしれません。

 お互いにPCの画面を覗き合えるようなオフィス環境では、多くの社員は一日の大半の時間を「上司と同僚による常時・相互監視」という心理的緊張下で過ごすことになります。

 在宅勤務の画期性は、働き手をこの緊張状態から解き放ち、上司・同僚との距離感を主体的に設定できるようにした点にあります。