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《「全く何だったのか。恥ずかしい限りだ」韓国紙も酷評》元慰安婦訴訟賠償命令に“突然の弱腰”文大統領の思惑

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〈過去4年間、韓国政府が繰り広げてきたことは全く何だったのか。結局、何の方策もなしに国内政治用として利用したにすぎなかった。(略)底意の見える振る舞いを、日本は全て見ている。恥ずかしい限りだ〉

 1月18日に行われた韓国・文在寅大統領の年頭会見での発言が波紋を呼んでいる。

 引用した一文は、韓国3大紙の1つ、保守系の「朝鮮日報」(1月20日付)社説の一部だ。タイトルは「『日本企業資産の現金化は駄目』と急変…4年間の反日追い込みはなぜやったのか」と、文大統領に批判的だ。

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年頭会見での韓国・文在寅大統領。慰安婦訴訟の判決について「困惑している」と述べた(1月18日) ©getty

 文大統領は18日の会見で、日本政府に賠償を命じた元慰安婦訴訟の韓国・ソウル中央地裁の判決に対して、「正直、困惑している」として、「原告が同意できる解決策を探すため、韓日間の協議を重ねる」と表明した。判決はその後、23日午前零時に日本政府が控訴しなかったことで確定している。

 さらに、日本企業の資産の現金化が焦点となっている元徴用工訴訟についても、「(日本企業の)資産売却は望ましくない。外交的な解決策を探すことが優先だ」と語った。これまでの「司法の判決に政府は関与できない」という突き放した姿勢から態度を一転させたのだ。

 在ソウルの日本人ジャーナリストが語る。

「文大統領がこれまでの日本に対する強硬姿勢を予想以上に軟化させたので、正直驚きました。『困惑している』『現金化は望ましくない』といった発言を聞いて、これまで何度も韓国には裏切られているとはいえ、ようやく『文大統領も現実を受け入れ始めたのか』と感じました」

 文在寅大統領の突然にも思える“心変わり”は、なぜ起きたのだろうか。

東京五輪を“第2の平昌に”

 文政権の対日姿勢の変化は昨年末から始まっていたと分析するのは、40年にわたって在韓記者として取材を続ける、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏だ。

「文大統領の変化は、昨年9月に安倍首相が退陣して、新たに菅政権が発足したことが影響しています。韓国では『日韓関係の悪化は、極右反韓の安倍のせいだ』というロジックが使われてきたので、関係を改善するには良いタイミングだった。その上で、文大統領の最大の目標である南北関係の改善のため、『日本を利用できる』と考えた。米朝首脳会談を実現したトランプ大統領が退き、北との関係は膠着状態。そこで文大統領が目論むのが、米朝を近づけた2018年の平昌冬季五輪の成功体験を下敷きに、東京五輪を舞台にした“金正恩引き出し”という、新たな対北外交策なのです」

 文政権下で、南北関係を劇的に変化させ、融和ムードを演出できたのが、2018年の韓国・平昌五輪だった。