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車両特攻、銃殺、放火…現在も収まらない“山口組”同士の「抗争」はなぜ起きてしまったのか

『日本のヤクザ 100の喧嘩』より #2

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 2015年、六代目山口組が5人の組員に絶縁処分、8人の組員に破門処分を出した。直後に脱退した13人は新団体「神戸山口組」を設立。山口組で史上二度目の分裂が発生したということになる。前回の分裂時には「山一抗争」と呼ばれる苛烈な戦いが全国各地で起こったが、今回は果たしてどうなるのか。多くの関係者が不安に思うなか、その予感は的中する……。

 現在も続いているとされる抗争はなぜ勃発してしまったのか。別冊宝島編集部によるヤクザノンフィクション『日本のヤクザ 100の喧嘩』を引用し、そのあらましを紹介する。(全2回の2回目/前編 を読む)

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山口組が下した驚きの「絶縁」処分

 2015年8月27日、六代目山口組が驚くべき処分を下したことが明らかになった。

 入江禎元舎弟頭(二代目宅見組組長)、井上邦雄元若頭補佐(四代目山健組組長)と元舎弟3人の計5人に対して、ヤクザ社会で最も重いとされる「絶縁」処分が出された。また、絶縁の次に重い「破門」処分が、元幹部3人と直参5人の計8人に出されたのだ。

 そして、直後に脱退した13人が新団体「神戸山口組」(兵庫淡路)を設立したことが判明。トップには山健組組長を兼任するかたちで井上組長が就任している。

 こうして山口組は1984年6月に、竹中正久若頭(当時)が四代目組長に就任することが決定し、反対派の親分衆らが脱退して「一和会」(山本広会長)を結成して以来、二度目の分裂が発生したのである。

 前回の分裂では山口組と一和会の間で「山一抗争」と呼ばれた苛烈な戦いが全国各地で繰り広げられ、多くの血が流された。そのため今回も、六代目と神戸の間で激しいぶつかり合いが起きるのではと、分裂直後からヤクザ業界のみならず、マスコミや警察関係者の間でも噂が飛び交った。

鳴り響いた銃声

 しばらくは不気味な静寂が続いたが、同年10月6日になってついに、長野県飯田市内で、分裂以降では初めて銃声が鳴り響いた。六代目側直系の傘下組織の元組員が、同傘下組織幹部である兄貴分から射殺されたのだ。原因は元組員が神戸側系組織への移籍を画策しているのを知り、必死に止めようと説得を重ねたが、こじれたために発砲してしまったようだ。

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 警察は抗争事件とみてすぐに捜査を開始したが、両山口組ともに内輪もめと判断したようで銃声が連続することはなかった。

 だが、この事件の発生により、ある事実が表面化したのだ。それは近隣の山健組系組員らが、事件が起きた飯田市内に数百人で毎晩のように押しかけていたことだった。飯田市内のメインストリートを乗ってきた車両で埋め尽くし、地元の六代目山口組系直系組織とは一触即発の状態だったという。こうした挑発行為は過去の抗争では見られなかった。