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「ドアが開かない!」一歩間違えれば谷底へ転落…あの日、国道488号でのドライブは“命懸け”だった

2021/02/06

genre : ライフ, , 娯楽, 社会

 2021年の年明けから、日本海側を中心に各地で大雪による被害が相次いだ。北陸や東北、北海道では自動車の立ち往生や交通事故も多発した。

 私も週末を利用して福井県大野市まで友人宅の雪かきを手伝いに行き、その道中で立ち往生したトラックや、路肩で雪に埋もれてしまっている乗用車を多数目撃した。私自身の車も雪道で滑ってしまい、運良くどこにも衝突せずに立て直せたが、肝を冷やした。

福井県大野市までの道中では、立ち往生したトラックも多数目撃した

 雪道では、冬用タイヤを履いてチェーンを装着し、どんなに気をつけて運転しても、滑る時は滑る。また、運転中に吹雪に遭遇すると、たとえ高速道路上であったとしても立ち往生が発生することは、記憶に新しいところだろう。

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 もしもそれが山道であれば、遭難する可能性だってある。そこで、以前、私が国道上で遭難しそうになった時のことを、教訓を込めてご紹介したい。

国道上で遭難しかけた際の写真。なぜこんな事態に陥ってしまったのか……教訓を込めてご紹介したい

雪が舞う“酷道488号”を走る

 何年も前の話になるが、11月上旬、私は友人と二人でお好み焼きを食べるため、広島県を訪れていた。その際、ついでに“酷道”も走ろうという話になり、山口県まで足を伸ばすことにした。酷道というのは、国道なのに状態が酷い道のこと。「国道=しっかり整備された道」というイメージとのギャップが面白く、その友人と遠くへ出かける際には、どこかしら酷道を経由するのが当たり前になっていた。

 山口県で早朝の秋吉台を見学した後、私たちは日本海側の島根県へと向かった。島根から“酷道488号”に入って三坂峠を越え、広島へ戻るという計画だ。島根県益田市と広島県廿日市市を結ぶ488号は、中国山地を貫く総延長111キロの国道で、その道のりは中国地方屈指の険しさを誇る。

 秋吉台では朝日が拝めたが、島根県に近づくにつれて天候が一変し、季節外れの吹雪となった。私は普段から酷道を走っているため、タイヤは11月に入ると早々に冬用タイヤに交換していた。また、いざという時のために、車にチェーンも積んでいる。早めの装備が功を奏し、思いがけない雪道も難なく走ることができた。

益田市から国道488号に入る。雪は降り続けているが、積もるほどではない
車は冬用タイヤに交換済み。いざとなればチェーンもあるから安心と、このときは思っていた

 益田市街を過ぎて、目当ての国道488号に入る。鉛色の空からは、白い雪が降り続けているが、道路にはセンターラインがあり、それなりに交通量もある。低速で走っている限りは、恐怖は感じなかった。しかし、この先には激しい地形の匹見峡、そして広島との県境の三坂峠と、凶暴な酷道が待ち構えている。事前にネットで交通情報を調べた限りでは通行できるはずだが、この雪では不安も大きい。まだ見ぬ景色への期待も入り混じりながら、アクセルを踏み続けた。