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「芸術的でサーカスを観ているような…」名人挑戦をうかがう斎藤慎太郎八段の“詰将棋愛”

「芸術的でサーカスを観ているような…」名人挑戦をうかがう斎藤慎太郎八段の“詰将棋愛”

斎藤慎太郎八段インタビュー #2

2021/02/02
note

将棋めしは、量よりは何を摂取するか

――将棋ファンが注目していることの一つに将棋めしがあります。関西将棋会館では対局中の昼食にCoCo壱番屋から出前を取ることもできますが、斎藤さんのお父さん(CoCo壱番屋のフランチャイズオーナー)のお力添えなどがあったのでしょうか。

斎藤 関西で出前の店の選択肢を増やしたいという話はもともとありました。ちょうど関西将棋会館の目の前に店がありますが、その店の方が父のもとで修行していた縁があり「宅配できる余裕があるのならば」と父が話を通したように聞いています。

――ご自身の将棋めしに対するこだわりはありますか。

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斎藤 第一として、なるべく眠くならないように考えていますが、それでも昼食後は厳しいですよね。量よりは何を摂取するかのほうにより重きを置いています。炭水化物をエネルギーに変えやすい食材が豚肉と鰻ということを聞いてからは、豚肉を食べるようになりました。鰻はここぞというときの勝負メシです(笑)。昨日のA級順位戦でも鰻を夕食に頼もうと思ったのですが、夜はやっていなかったようでした。

 

「4強」に五分以上で戦える実力をつける

――改めて、これからの目標についてうかがいたいと思います。

斎藤 近いところでいえば、結果を残せる可能性がある順位戦に重きを置いて頑張りたいというのはありますよね。でも今期から、具体的な目標というよりは一局一局を大事にという気持ちが強くなっており、先の目標は余り立てないようしています。気負わずやっていくためというのが一つですね。

 そして、現在のタイトル保持者が4名で、当たり前ですが「4強」に勝たないとタイトルが取れません。さらにそこに至るまでにも4強に匹敵する人も多く、そういう中での競争に勝たねばならない状況です。4強に五分以上で戦える実力をつけるというのが、一番に思っていることです。

――名人戦で挑戦権を獲得すれば、4強の一人である渡辺明名人との七番勝負です。

斎藤 渡辺名人は私が奨励会へ入会した頃に竜王を獲得されて、それから連覇を続けられました。「一番年齢が近い大棋士」という姿をずっと見てきましたが、攻めの突破力が他の人以上に抜きんでており、これを真似したいと思う将棋でしたね。そしてここ数年でスタイルを変えて、バランス型に近くなっています。私が修行時代に見ていた頃と今の渡辺名人の像が明らかに変わっているので、柔軟に対応されていることがわかります。そこが強みですね。

――他の4強、豊島将之竜王、藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座については。

斎藤 豊島竜王と永瀬王座はタフですよね。ここ1、2年で改めて思い知らされました。豊島竜王の勝負におけるタフさは、タイトル戦を戦い続けて得たものと思います。永瀬王座は作戦家で、どんな将棋でも指せ、4強の中では一番多くの戦型を指している感があります。そして藤井二冠は冒頭から話している通り、伸び幅がすごい。それに加えて弱点がなさすぎるのが強みだと思います。

 

写真=三宅史郎/文藝春秋

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