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連載池上さんに聞いてみた。

池上彰氏「NHKが独立した報道機関であることを示す絶好のチャンスを潰してしまいました」

池上彰氏「NHKが独立した報道機関であることを示す絶好のチャンスを潰してしまいました」

池上さんに聞いてみた。

2021/03/02
note

Q NHK報道番組キャスターの相次ぐ交代 池上さんはどう思いますか?

 2月10日、NHK報道番組「ニュースウオッチ9」の有馬嘉男キャスターと、「クローズアップ現代+」の武田真一アナウンサーが一気に交代する人事が発表されました。前回の交代がそんなに前だった記憶もなく、看板ニュース番組が急に様変わりするのは率直に驚いたのですが、池上さんはどう思われましたか。(50代・男性・無職)

武田真一アナウンサーは大阪に異動することが発表された (写真はNHK大阪放送局) ©️iStock

A 異動自体は、十分に説明がつくことですが。

 有馬さんは4年間キャスターを務めましたから、交代してもおかしくはない時期でした。

交代することになった有馬嘉男キャスター(右)。続投する和久田麻由子アナウンサーと組む後任は元米ワシントン支局長の田中正良氏(ニュースウオッチ9HPより)

 武田さんの大阪転勤を「左遷」と言った人がいますが、これは大阪の人に失礼ですね。大阪の人にしてみれば、「わいらが住む場所は左遷場所か」ということになってしまうからです。NHKとして地方も大事。過去にも大物アナウンサーが大阪や札幌などに転勤しています。

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 とまあ、ここまで書いたように、異動それ自体は、十分に説明がつくことなのです。

武田真一アナウンサー ©️文藝春秋

 でも、と思います。有馬さんは、菅さんへのインタビューで不興を買い、「降板」の噂が出ていました。だったら、そもそも交代させる予定だったとしても、ここで交代させてはいけません。「NHKは政権に忖度しない」という方針を見せるチャンスだったからです。

 武田さんも、自民党の二階幹事長へのインタビューで二階さんが不快感を示したと報じられていましたから、そんなときは異動させてはいけなかったのです。

 NHKが独立した報道機関であることを示す絶好のチャンスを、今回の人事異動は潰してしまいました。「ああ、やっぱりNHKは」とみんなに見られてしまうのです。残念です。

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