オーストラリアで2月25日、メディア取引法案が可決された。巨大IT企業がネット上でニュース記事を表示する際、報道機関へ使用料の支払いを義務づけた世界初の法案だ。背景にはIT企業がニュース記事にタダ乗りし、広告収入を奪ったとの批判がある。
この法案に「悲願が叶った」と喜んでいるのが、豪出身の世界的メディア王、ルパート・マードック(89)。豪州は2000年には新聞が広告市場で96%のシェアを握っていたが、現在は12%まで減少し、グーグルとフェイスブック(FB)が73%を占めている。
こうした状況をマードックは苦々しく思ってきた。
「彼が率いる『ニューズ・コープ』は豪州の主要都市では日刊紙市場の6割を支配している。自分の帝国から広告主や読者を奪う相手に容赦しないことで有名です」(在豪記者)
2016年には、FB創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグに「メディアに対価を支払わなければ、世界各国にロビー活動を行う」と脅したこともあった。
そして、昨年4月、豪の財務相が「我が国のメディア産業が生き残るため、IT大手との公平なビジネス環境づくりが大切だ」と述べ、記事使用料を義務づけ、従わない場合は罰則を科す方針を発表した。また昨年6月には、コロナ禍で広告収入が減り、豪州ではマードック傘下の地方紙のうち、約9割にあたる112紙が紙媒体の発行をやめた。