昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載ネット秘宝を探せ!

17歳の模擬選挙ドキュメンタリーでとびかった多数派工作、SNSの情報拡散…あれ、民主主義ってヤバイ!?

2021/03/07
 

「面白すぎる……」と思わず唸らされた社会派作品が、Apple TV+で配信中のドキュメンタリー『ボーイズ・ステイト』だ。劇映画以上にドラマチックな展開に富んだ作品で、昨年のサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門のグランプリ受賞作である。

 本作は毎年夏、米国・テキサス州全土から約1000人の男子高校生を集めて行われるサマーキャンプに密着。参加者は架空の2つの政党に振り分けられ、各党の委員長を選出し、党の綱領を定める。また、それぞれ知事候補を擁立し、最終的に全参加者の投票によって“少年たちの州(ボーイズ・ステイト)”の知事を決める。つまり、10代の若者が選挙や政治活動を通じて「民主主義」を体験的に学ぶプログラムだ。

 こう聞くと「なんて有意義な取り組みだろう」と感じるかもしれない。だが、本作は選挙によって多数派が“勝者”となる民主主義の現実と、それ故、生じる様々な矛盾をありありと見せていく。テキサスという土地柄ゆえ、参加する高校生は共和党支持の白人保守層が圧倒的に多い。その中で人種的マイノリティーや中絶・銃規制を支持するリベラルな思想を持つ若者は、委員長や知事候補に選ばれるため策を講じる。本心を隠して多数派になびく者、どっちつかずの意見でごまかす者……。選挙戦では、SNSで対立候補を貶(おとし)める情報を拡散するなど狡猾な手段も厭(いと)わない。まるで大統領選のような展開を見せるのだ。

 作り手目線で驚かされたのは、制作者の“読み”の凄さ。こうしたイベント追っかけ系ドキュメンタリーは狙う被写体の選定が難しい。約1000人の中からカメラが追える人物は限られているからだ。本作が狙いを定めた高校生はドンピシャ。事前リサーチから「人を見る目」が冴えていたことが窺える。まさに「選挙」と同様に人を見る目が作品の出来を左右し、神懸かった展開を呼び込んでいたのだ。

INFORMATION

『ボーイズ・ステイト』
https://tv.apple.com/jp/movie/umc.cmc.1aatz9gwjhnpfqqt8noafagq

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー