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リモートワークで社員が孤立するリスクを、創意工夫で乗り越えた三菱商事太陽の秘訣

2021/03/18

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コロナ禍によって脚光を浴びるリモートワーク。場所にかかわらず働ける利点は大きいが、社員が孤立するリスクも見えてきた。障がいのある人の雇用の観点から全国規模のリモートワークにいち早く取り組んでいる三菱商事太陽の取り組みにヒントがある。

手厚いサポートで個々人が能力を発揮する

「この仕様変更の詳細について教えてもらえますか」「ついでに書類のことも問い合わせて」――。

 大分県に拠点を置くIT企業・三菱商事太陽では、広島や富山、東京など全国各地に点在するシステムエンジニア(SE)らが、あたかも隣り合わせの席にいるようにやりとりをしている。業務を担っているのは、重度身体障がいや精神障がいのある在宅ワーカーたち。これまで「働きにくい」とされていたが、障がいの特性にあったサポートを受けることで、それぞれが遺憾なく能力を発揮している。

聴覚過敏のある松尾さんは、自宅であれば雑音が少なく作業に集中しやすい
聴覚過敏のある松尾さんは、自宅であれば雑音が少なく作業に集中しやすい

 三菱商事太陽は、故・中村裕博士の提唱した障がい者には「保護より機会を」との理念を具現化すべく、1983年に社会福祉法人「太陽の家」と三菱商事の共同出資で誕生。現在は障がいのある社員が全体の6割を占める。能力はあるものの通勤やオフィスでの作業が難しい人々にも働ける環境を整えるべく、06年からリモートワーク制度を整備してきた。18年には業容拡大のため、全国に潜在している障がい者を研修・雇用する「在宅SE養成コース」を創設し、リモートワークを本格化してきた。

 取り組みを可能にしているのは、会社による手厚いバックアップ体制だ。同社では精神保健福祉士、社会福祉士、ジョブコーチが常駐するワークサポート室を配置し、個々人の障がいの状況や特性に応じて支援している。

 在宅勤務社員の採用にあたっては、ワークサポート室メンバーが候補者の自宅を訪問し、生活面やIT設備など働ける環境にあるかを確認。課題があっても直ちに不採用とはせず、外部の支援機関や家族と連携して採用に向けて働きかける。この積極的な姿勢によって、19年は身体や精神に障がいのある13人を在宅SEとして採用している。

チャットツールなどを活用して、在宅勤務社員と本社社員で緊密にやりとりする
チャットツールなどを活用して、在宅勤務社員と本社社員で緊密にやりとりする

離れていても、五感を活かすコミュニケーション

 在宅ならば障がいのある人でも働きやすいかと言えば、そう単純ではない。同社でも在宅SEのうち3人は1年弱で退職した。社員同士が対面せずに働くリモートワークでは気軽な雑談や声かけができず、健常者であっても人間関係が築きにくい。時には孤立感が精神を蝕むことも出てきてしまう。

 そこで同社はITツールも駆使して、距離を超えた組織づくりに取り組んでいる。「足りないところは、科学の力で」。これもまた、中村博士が唱えた精神だ。

 例えば、パソコンやキーボードのモニタリングによって勤務実態を見える化。また動画を用いて、AIが表情の変化から心の健康状態を読み解く「感情分析ツール」を導入し、ストレスの高まりを早めにキャッチするよう試みている。

■感情を数値で見える化
感情分析ツールを使えば、1分足らずの動画からAIが表情の変化を読み取り、ストレスや緊張の高まりを見える化する
■感情を数値で見える化
感情分析ツールを使えば、1分足らずの動画からAIが表情の変化を読み取り、ストレスや緊張の高まりを見える化する

 特にユニークなのが社員交流のありようだ。全国規模で実施したオンラインの交流イベントでは、参加者が同じ飲み物や食べ物を楽しめるように事前宅配を利用。さらにバーチャルオフィスツールを使い、オフィスにいる時と同じ感覚で席を移動したり、隣りあった人に話しかけられるよう工夫を凝らしている。離れていながらでも、同じものを飲み食いし、周囲の気配を感じられる。五感を活かし、血の通ったやりとりができるというわけだ。

共同体としての職場の価値を構築する

 これらのコミュニケーションは、組織の一体感の醸成に貢献している。聴覚過敏のため在宅勤務をしている開発部の松尾英明さんは「在宅勤務は本来、一人で仕事をするための環境整備です。しかし大勢の在宅勤務社員同士がつながり、一つの成果物を作ることで、一人では得られなかった大きなやりがいが得られています」と話す。

 同社の福元邦雄社長はこう話す。

「コロナ禍で人と接触しないテレワークが脚光を浴びていますが、孤独な環境で作業をこなすだけでは、人はときに心を病んでしまいます。働く仲間と雑談を交わし、共感し合うことで、職場という共同体はより大きな価値を生み出します。現在はコロナ禍によって人類全体が傷を負っている状態ですが、傷は『創』とも書き、新たな知恵を絞るきっかけにもなりえます。創意工夫で働き方を進化させることが、我々には可能なはずです」

 組織の一体感を深める独自の取り組みが評価され、同社は厚生労働省の2020年度「輝くテレワーク賞」特別奨励賞を受賞している。テレワークの中でいかに社員同士がつながり合うかは、ウィズコロナの時代にあらゆる組織で求められる課題だ。その答えが、三菱商事太陽の試みの中に見えてくる。

No Charity, but a Chance!
時を経ても朽ちない「保護より機会を」の理念

中村裕博士
中村裕博士

 日本パラリンピックの父として知られる故・中村裕博士は、「訓練と職種・環境さえあれば、ほとんどの障がい者はどんな仕事でもできる」と訴え、1965年には障がい者の授産施設として社会福祉法人「太陽の家」を創立。さらに重度障がい者であっても働ける情報処理分野での職域を開拓すべく支援企業を探して日本中を奔走し続けた。

 そこで出会ったのが、三菱商事だ。83年には三菱商事太陽が発足。中村博士は第一期生となる社員たちに「これからはコンピューターの時代になる。君たちが頑張れば重度障がい者の新しい道が開ける」と励ましたという。中村博士が掲げた障がい者には「保護より機会を」の理念は、50年以上経った今も色褪せず、三菱商事太陽に受け継がれている。

INFORMATION

障がいのある人の雇用に関するポータルサイト「TOMONY(トモニー)」

障がいのある人の雇用に関するポータルサイト「TOMONY」がオープンした。障がい者雇用の基礎知識や、ともに働き続けるための考え方、支援者のための情報などを発信する。運営は三菱商事太陽。サイト内から同社のVRオフィス見学も可能。

提供:三菱商事