昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「『その女、ジルバ』の台本を読んだとき、これは面白くなりそうだと思った」――草笛光子「きれいに生きましょうね」第2回「コロナと言葉」

2021/03/13

 本日最終回を迎えるドラマ『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)での熱演が話題の俳優・草笛光子さん。「週刊文春」3月11日号から新連載「きれいに生きましょうね」が始まりました。第2回を特別公開します。

◆ ◆ ◆

 憎らしい新型コロナのおかげで、去年の春はいろいろな仕事が延期されました。毎日が日曜日になってしまい、テレビの国会中継をよく見ていました。つまらないと思いながら、見てしまうのです。それで気になったことが、ふたつ。

 大臣が答弁するとき、立ち上がってマイクの前に行って、「なんとかかんとかです」と答えます。ところが最後の「す」まで言い終わらないうちに、サッと席へ戻ってしまう。

 どうしてもう少し、間が持てないのでしょう。パッパッパと答えて、そそくさと逃げていくように見えるのです。そんなに後ろめたいのかしら。

 あれは損だな、って思います。舞台で言うなら「引っ込み」がヘタね。余韻がないのです。「です」と言い切って、ひと呼吸おいてから戻れば、大したことを言ってなくても堂々として見えるはずですよ。

©iStock.com

 気になったことのふたつめは、言葉です。政治家にとって、言葉は大事でしょう。ところがあれでは、「何々をやります」なのか「やりません」なのか、よくよく聞いていないとわかりません。言葉尻がはっきりすれば意味が伝わるのですが、フニャフニャッと言われてしまうと、「エッ、どっちなの?」となります。日本語は点と丸がきちっとしていなければ、意味が通る文章にならないのです。

 特に近頃はマスクをしているせいで、言葉尻がフッと消えてしまいがちです。そういうことを誰か、あの方たちに付いて教えているのかしら、と思います。

 私は、ある演出家に「草笛さんは、セリフを捨てないからいけない」と言われたことがあります。お芝居の中では、はっきり言いすぎると情感がなくなってしまう「捨て言葉」というのがあるのです。「捨てゼリフ」じゃありませんよ。そこをほめてくださる方もいらっしゃったのですが、その演出家からは、はっきり言いすぎると指摘されたわけです。

 けれども、お国の上に立つ方が国民の皆さんに大事なメッセージを伝えるとき、「捨て言葉」ではいけませんよね。ピシッとこちらへ伝わる日本語で、はっきり言い切っていただかないと、安心できません。