食は人の営みを支えるものであり、文化であり、そして何よりも歓びに満ちたものです。そこで食の達人に、「お取り寄せ」をテーマに、その愉しみや商品との出会いについて、綴っていただきました。第15回はフードコラムニストの門上武司さんです。
◆ ◆ ◆
旅を続けている。
出かける前に、その「地名」と「自家焙煎」というキイワードを打つと数軒の珈琲店が見つかる。どの店を選ぶかは勘に頼るしかない。結構大当たりがある。
珈琲を飲むことが目的だが、ついついマスターと珈琲から始まり、時にはカウンターカルチャーの話題に広がり、長居をしてしまうこともしばしば。
そこで出会った珈琲の味わいが忘れられなくて、しばらくするとその珈琲店に連絡をし、豆を送ってもらう。基本は深煎りを好む。
豆が到着する。豆を挽く。ドリップでじっくり抽出する。味わうと、その場で話したことやその地の様子が浮かんでくる。つまり、その珈琲を飲むことで旅の想い出がくっきりよみがえる。その後、何度も豆を取り寄せ、定期的にその地に旅をしたり、マスターが関西遠征の時のガイド役を務めることもある。
まさに珈琲を媒介として新たなネットワークが生まれる。