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42歳自衛官「雑談ができません」…中野信子が教える下ネタ、家族ネタが許されない時代の雑談術

あなたのお悩み、脳が解決できるかも?

2021/03/24

 みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします。

中野信子さん ©文藝春秋

◆ ◆ ◆

Q 雑談というものができません――42歳(男性)・既婚・自衛官からの相談

 私は雑談ができなくて辛いです。特に自分でこれをやりたいとかないし、自分の考えも知識もあまりない状態で自信もなく、雑談もできないままいい年齢になってしまいました。現状を変えていかないといけないと思いご相談しました。

最新回は発売中の「週刊文春WOMAN 2021年 春号」に掲載中

中野信子の回答

A 雑談ができないと悩まれている方は少なくないようです。これは脳の成長などとはほとんど関係がなく、経験さえ積めば誰でもできるようになるのですが、ただ、「雑談」と言われると何を話していいかわからなくなってしまうのですよね。

 昭和天皇がかつて「雑草という草はないんですよ。どの草にも名前はあるんです」とお言葉を残されていますが、「雑」というテーマはありません。

 とりたててシリアスな話ではないけれど、相手の心をほぐし、自分も楽しめるようなテーマを、特に他に話すことのない空白の時間に、さっと用意できるように、あらかじめ脳の中の引き出しに準備しておくのです。その引き出しには「雑」とでも仮にラベルを貼って……そうすれば、ほとんどの雑談に対応できます。

 よく引き合いに出されるのは「木戸にたちかけし衣食住」ですね。これは軽いトークテーマになりそうな項目の頭文字をまとめたもので、「き」は気候、「ど」は道楽、「に」はニュース、「た」は旅、「ち」は知人、「か」は家族、「け」は健康、「し」は仕事、衣食住はそのまま衣食住それぞれについての話です。

 いかがですか? こうして「雑」ではなく、きちんとテーマを定めるだけでも、もう何十分も話せそうな気がしてきませんか?

 逆に、避けた方が良いテーマもあります。こちらも語呂合わせで「政宗の皿(まさむねのさら)」といわれますね。「政」は政治、「宗」は宗教、「の」は変則的ですが野球のことです。野の字を「の」と読むのですね。スポーツは理屈を超えて熱く応援されている方も多いもので、会話がエスカレートすると思わぬ感情的な齟齬を生むことがあるので、触れない方がよい、ということのようです。

「皿」はサラリーのこと。こちらも、あまり立ち入ったことを聞いて、互いに不快な思いをしないように、あらかじめそれは避けておこう、という品の良い振る舞いを心掛けるためのいましめ、と思っておくといいと思います。

 かつては、日本人の雑談といえば家族ネタが多かったかもしれません。妻(夫)に対する愚痴、親や子どもの困り話、あるいは自慢……。ですが、現在は場合によってはマウンティングと受け取られかねないし、家族のカタチも多様化して共通の話題にはしづらくなりました。またプライバシーに立ち入ることもあまり上品なこととは思われなくなってもきました。