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2021/03/24

 ところで、木戸にたちかけし……は、たちかけせし、というバージョンもあるのです。この「せ」は、性(あるいはセックス)のことです。いわゆる下ネタですね。確かに、距離を縮めるには一定の効果がありそうです。

 ただ、気の置けない仲間の内でならいいかもしれませんが、今は同性間の性的感情にも配慮すべき時代になりました。気を付けていなければモラハラ、セクハラに問われてしまう案件にもなりかねません。ですので、「せ」は、雑談に苦手意識のあるうちは、避けておいた方が無難かもしれません。

 また、通訳の方に教えていただいたのですが、内外を問わず、誰もが理解し、好きで、敵をつくらない最良のテーマは「旅」だそうです。「た」ですね。

 こういうところに行きました、初めて食べた○○がおいしかった、あの海がきれいだった、山の風景が好きだというだけで、だいぶ時間ももちます。もしこれまであまり自分の時間を持つことができず、旅行にあまり行った経験がなかったとしても、「○○にいつか行ってみたいんですよ」と願望の形で話す、という手があります。

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 私のお薦めはアートです。「ど」ですね。相手の方から一目置かれるようになるかもしれません。「僕はお金があったら、この作家を買いたいんだ」等といって、渋い玄人好みの作家の名前を出してくる人がいたら、とてもカッコいいなと私は思います。実際には、高すぎてとても手が届かないような作品であったとしても。

 奥の手として、「僕は雑談が苦手で今、雑談が得意になるというチャレンジをしているんです」と話してしまうのも方法です。

 覚えておいていただきたいな、と思うのは、相手の沈黙はあなたのせいではないということです。多くの場合は、単に話すことがないだけでしょう。または、疲れていて、ゆっくり休みたいのかもしれない。あるいは、高確率であり得るのは相手も「雑談ができない」人だという可能性です。

 コミュニケーションは双方が協力して成立するものです。話したいときには話して楽しめばいいし、そうでないときには沈黙を楽しめばいいのです。沈黙にも意味や価値があり、相手が黙っているからと言って、あなたが悪いということにはなりません。

※最新回は発売中の「週刊文春WOMAN 2021年 春号」に掲載中です。

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text:Atsuko Komine

週刊文春WOMAN vol.9 (2021年 春号)

 

文藝春秋

2021年3月22日 発売

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