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連載ネット秘宝を探せ!

ネトフリ会員は必見!性別のカテゴリーや親子、他人という関係をも越えた“愛”の物語

2021/03/29
 

 素晴らしい作品だが、その魅力をうまく言葉で伝えられない。そんなもどかしさをおぼえる作品が『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』。劇場公開はせず、去年5月からネットフリックスで独占配信され、じわじわと口コミで評判が広がっている小さな名作だ。

 舞台は、アメリカの田舎町。主人公は、父と2人暮らしをする17歳の中国系移民2世の女の子エリー・チュー。アジア系の彼女は学校でも浮いた存在で友達は1人もいない。ただ、成績優秀な彼女はクラスメイトのレポートを代筆し稼いでいた。そんなある日、彼女の“文才”に目をつけた男が現れる。近所に住むおバカな純朴青年ポールだ。彼は、いつも本を読んでいる意中の美女アスターへのラブレターを「自分に代わって書いてほしい」とエリーに懇願する。しかし、その美女アスターは、実はエリーの意中の人でもあった。かくして、2人は協力しながらアスターへのラブレターをしたためるのだが……。

 こうした設定を聞くと、所謂「LGBTQ」がテーマの作品と思われるかもしれない。実際、これまでの多くの作品では主人公が同性愛者ならば、作品のテーマはまさしく「同性愛」についてであることが多かった。だが、本作は違う。もちろん「男女の間に友情は成り立つのか?」といった古臭いテーマでもない。あえて言葉にすれば、異性や同性といった性別のカテゴリーや、さらには親子や他人という関係をも越えた「愛」についての物語、というのが相応しいかもしれない。……でも、こんなことを言葉にしたところで、薄ら寒いだけで何一つ伝わらないだろう。

 ラブレターやSNSを通じて盛んに気持ちを言葉にしようとする登場人物たちも、心が通う内に次第に言葉が少なくなっていく。心に染みる名画もまた、観客を寡黙にさせるものだ。おそらく人生の中で度々思い起こされる、いつまでも心に残る一作である。

INFORMATION

『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
https://www.netflix.com/jp/title/81005150

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