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生活保護申請の“壁” 親族への「扶養照会」はなぜ問題なのか

マンガ『健康で文化的な最低限度の生活』を読む

2021/03/30

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、誰もが「貧困」の当事者になりうる時代へと突入した。

 日本の貧困について様々な場で問題提起をしている私のもとにも、2020年4月以降、コロナ禍で仕事を失ったり収入が激減したりで生活が破綻した人々からの連絡が相次いだ。緊急事態宣言下の休業要請で勤務先の飲食店が閉まったきり、そのまま退職を余儀なくされてしまった人。旅行客の足が遠のいたことで廃業に追い込まれた宿泊施設のオーナー。

 この1年間、これまで経済的困窮とは無縁のように思われていた人々が、予想だにしていなかったであろう状況に飲まれていくのを嫌というほどに見せつけられた。彼ら彼女らは、何も「不測の事態」に備えて準備をしていなかったわけではない。リスクマネジメントを徹底し、「自助・共助」を尽くしてもなお、それを大きく上回る「個人の力のみでは一切太刀打ちができない打撃」に見舞われただけなのだ。

©iStock.com

 そんな時節に落胆していたとき、とある漫画を読んだ。ビッグコミックスピリッツにて連載中の『健康で文化的な最低限度の生活』だ。

 タイトルは、「生活保護法」の後ろ盾となる日本国憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の条文に由来する。この漫画では新人ケースワーカーである主人公の視点から、生活保護制度にまつわる問題が主なテーマとして扱われている。

恐ろしいまでにリアルな実情

 読んでいて何より驚いたのは、あらゆる困窮世帯のケースを取り上げているにも関わらず、そのひとつひとつがリアルで、非常に精細な描写がなされていたことだ。作者の柏木ハルコさんは、圧倒的な取材量に基づき、漫画作品という形で日本の貧困問題を浮き彫りにしている。

 実は経済的困窮に陥った際、福祉事務所で行う生活保護の申請がスムーズに終わり、すみやかに生活保護費の受給が開始されるケースはそう多くない。受給にいたるまでに、外からは見えづらいハードルがたくさんある。

 さらに生活保護費の受給が決定してからは、受給者は経済的自立に向けて、ケースワーカーや社会福祉士などの力を借りながら、抱えている問題を解決していかねばならない。本作はそうした生活保護申請にまつわるハードル、受給者の葛藤や苦しみにもフォーカスを当てている。

 そのため「貧困問題に関心はあるが、何から学べばいいかわからない」という人にも、ぜひ一度手にとって読んでもらいたい。

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