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2021/04/05

“台湾の至宝”TSMCがカギを握る

 なにしろアップル、クアルコム、ソニーなど世界の大手が供給枠の確保を頼み込んでいる。TSMCの半導体を搭載できるかどうかで製品のクオリティが大きく左右されるためである。

 1987年創業の同社は半導体生産の設計と製造を分離する垂直分業の流れに乗って規模を拡大し、技術を磨いた。現在主流の7ナノメートル半導体で優勢を確立しただけでなく、巨額の資金を研究開発につぎ込み、今後の主流になる5ナノ、10年後の主流とみられる3ナノ・2ナノでも開発競争をリード。まさに台湾の至宝だ。

 新冷戦のなかでサプライチェーンの米中分断が起きつつある。中国のファーウェイ排除に動いた米国だが、台湾抜きにはIT分野での対中優位は維持できそうにない。万が一、中国による台湾侵攻でTSMCを押さえられれば、西側諸国にとって悪夢となる。逆に言えば、同社の存在が、米国が台湾防衛に本腰を入れる動機にもなり得るのだ。台湾ではコロナ対策に成功したものの、ワクチンの入手が遅れているため「半導体とワクチンの交換を行うべきだ」との議論も国会で出ている。

 同社を創業から育て上げた伝説的経営者、張忠謀(モリス・チャン)前会長はかつてこう語った。「TSMCは世界の地政学政治の争点になる」。その予言が現実味を帯びてきた。

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