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現代に渋沢栄一がいたら迷わず投資するのはアフリカ? アフリカ発ビジネスの可能性。

文春オンライン×CREA WEB特別企画③「ソーシャルビジネス×ジェンダー平等がもたらす地球の未来」

2021/05/10

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シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役 渋澤健×JICAスタートアップ・エコシステム構築専門家 不破直伸 スペシャル対談

この2月、ある画期的なピッチコンテストがオンラインで開催された。JICA(独立行政法人国際協力機構)が日本経済新聞社と共同で開催した、ビジネスプランコンテスト「NINJA* Business Plan Competition in response to COVID 19」の決勝戦だ。ポストコロナ時代の革新的なビジネスモデル・テクノロジーを生み出すスタートアップ支援のために、アフリカ地域19カ国において実施。コメンテーターには、シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役/コモンズ投信取締役会長の渋澤健さんも登場し、現地アフリカからの熱気あふれるプレゼンテーションを見守った。今、アフリカ発のスタートアップを支援する意義とは、どこにあるのか。Project NINJAの生みの親である不破直伸専門家と渋澤さんに語っていただいた。
*Next Innovation with Japanの略。JICAが推進する起業家支援事業。

Well-beingな社会を持続できるよう、スタートアップに支援を

―― 渋澤さんの高祖父にあたる渋沢栄一氏は、約500もの企業の育成、約600の社会公共事業や民間外交に尽力され、「日本の資本主義の父」ともいわれていますね。最近ますます脚光を浴び、彼の言葉をまとめた『論語と算盤』は、出版から100年以上たっても、幅広い層に読まれています。

1916年発行の『論語と算盤』(写真は角川ソフィア文庫版)
1916年発行の『論語と算盤』(写真は角川ソフィア文庫版)

渋澤健さん(以下、渋澤) 私は、時代の変化が渋沢栄一を呼び起こしているんじゃないかなと思っています。彼は、明治維新というグレートリセットがあり、途上国、新興国だった日本に近代化社会のニューノーマルが生まれてきた、そういう時代背景に生きて活躍した人物でした。日本がモダンな先進国になるためには、国力を高めなければならず、国力を高めるためには民間力を高めなければならない。その民間力のエンジンになっているのは会社なのだから、会社が持続できるようにちゃんと利益を上げなければいけないよ、というのが彼の考えでした。

日本実業界の父と呼ばれた渋沢栄一。生涯でおよそ500の企業に関わった。 ©getty
日本実業界の父と呼ばれた渋沢栄一。生涯でおよそ500の企業に関わった。 ©getty

―― 資本主義ではなく「合本主義」を唱えていたと聞いています。

渋澤 はい、「一滴一滴の滴が寄り集まれば大河になる」という考えで、渋沢栄一にとって利益は一つの手段であり、経済活動の目的はよりよい社会の確立にあったと思います。最近の言葉で言えば“Well-being”ですね。誰もが幸せで、Well-beingな社会生活を持続的に送れる国になってほしい、と。そういうところが、地球じゅうの人々がコロナ禍に巻き込まれ、何が変わるべきなのか、何が変わらないのかということを仕事の場でも生活の場でもそれぞれ考えている今の時代と、非常にシンクロしているんじゃないかなと思います。

―― なぜ、そのような大きな視野で物事を考えられたんでしょうか。

渋澤 思い込みが激しかったんでしょう(笑)。現状に満足しない、未来志向がそこにあったからだと思うんです。生き物って成長したがるんですね。生物学的には、全体の枠の成長を止めてしまうと、枠の内側で奪い合いが生まれるでしょう。だから、経済成長というより精神的な成長かもしれませんが、何らかの成長というものが人類には必要なんじゃないでしょうか。途上国であろうが、先進国であろうが、根本、人類というのは同じだと思うので、成長することによって自分たちがこの世の中に存在している意義を感じることが、すごく大事だと思いますね。

不破直伸さん(以下、不破) 人間は成長を希求する生き物だということでいうと、僕が携わっている「Project NINJA」でも、まさにそれを強く感じますね。アフリカの人たちの、母国をもっと成長させたい、社会をもっとよくしたいという強い想いが、ピッチコンテストの3分間のプレゼンテーションに表れていました。

―― Project NINJAは、途上国の国づくりを支えるため、ビジネス・イノベーション創出に向けた起業家を支援するプラットフォームとしてJICAが立ち上げた取り組みですね。

不破 そもそも僕がアフリカと関わり始めたのは、JICAに入構する以前のことで、2015年に妻の転勤に伴ってウガンダに移ってからのことです。そこで実際にウガンダの様子を見てみると、とにかく仕事がない人が非常に多いんですね。首都もそうですし、地方に行くとさらにそれが加速している。安定した雇用は本当にないし、起業したいと考えている若者がいても、一部の地域では停電が多かったり、川が氾濫して村も家畜も流されたりというような状況で、ほとんど思考停止してしまっているんです。新たな畜産のビジネスをやりたい、ポテトの農園をつくりたいと、いろいろな考えはあるんだけど、やり方が分からないしお金がないから、何もしていない人が多い。

ウガンダの子どもたち。ウガンダの合計特殊出生率は5.1(2017年世界銀行調査)。
ウガンダの子どもたち。ウガンダの合計特殊出生率は5.1(2017年世界銀行調査)。

渋澤 なるほど。

不破 ちょうどその頃、JICAが若者の就労支援を行っているウガンダの職業訓練校で働くことになり、現地の起業家などと話をする機会が増えるにつれ、興味が深まっていったんですね。その後、いったん東京に戻ってから、2018年にエチオピアに移り、起業家支援を本格的に開始しました。

渋澤 具体的にはどういうことを?

不破 主にやっていたのが、現地の18歳から28歳ぐらいの大学生や大学院生を対象に、彼らが持っているすばらしいアイデアをプロトタイプ(試作品)にまで持っていく取り組みです。みんな自分が考えている社会課題があって、それに対するアイデアもソリューションも持っているけれど、その先をどうしたらいいか分からない。その部分を手伝って形にしていくという支援でした。でも、プロトタイプだけで終えてしまうのは非常にもったいない。現地の企業や投資家などとのネットワークを強化し、日本の企業ともつないで起業の可能性を高めようとなったんです。それが今のProject NINJAに至るわけです。

エチオピアのメケレ大学での講義の一コマ。
エチオピアのメケレ大学での講義の一コマ。

―― NINJAとはインパクトのあるネーミングですね。

不破 「Next Innovation with Japan」の頭文字をとっています。もともと名前自体は、日本らしいものがいいなと思っていましたし、「with Japan」は必ず付けたいと考えていました。ぐるぐる考えて、最終的にはJICAの中の投票で決まりました。

渋澤 NINJAの意味、先日の決勝で初めて知って感銘を受けました。めっちゃいいじゃんって(笑)。

不破 渋澤さんも以前から「Made with Japan」の大切さをおっしゃっていますので、便乗しちゃった感じです(笑)。

2020年1月のProject NINJAの発表会にて説明する不破さん。
2020年1月のProject NINJAの発表会にて説明する不破さん。

若い世代がマジョリティーであるアフリカは、まさにブルーオーシャン

―― 今回はアフリカ各国からビジネスプランを公募し、審査によって絞り込まれた会社が決勝でプレゼンテーションを行ったのですね。

不破 そうです。19カ国で募集を実施したのですが、応募総数は驚いたことに2713社にも上ったんです。審査の基準は、ポストコロナ時代に成長する企業を明確に選ぶというもので、今回は10社を選考しました。決勝はオンラインで行われ、それぞれのプレゼンテーションを見た日本企業関係者が事業連携や投資をその場で判断するほか、一般視聴者にも優秀賞を決めるアンケート投票に参加していただきました。

―― アイデアの新しさや社会的意義だけではなく、ビジネスとして成立させることができるのかも選考基準となるわけですね。

不破 そうです、持続性です。渋澤さんがおっしゃったとおり、持続性のある社会をつくっていくために何ができるかと考えた時、その手段の一つが起業してお金を稼ぐことだと考えています。といっても、視聴者の皆さんは自由に投票してくださっていいんです。日本からすると、地理的にも心理的にもハードルがあり、文化も生活も大きく違うアフリカに関心を持ってもらうことが大きなテーマですから。

―― 決勝には渋澤さんもコメンテーターとして参加されていましたね。

今年の2月に行われたNINJAの決勝戦でコメンテーターとして参加する渋澤さん。
今年の2月に行われたNINJAの決勝戦でコメンテーターとして参加する渋澤さん。

渋澤 はい、起業家の方々が3分という限られた時間できっちりプレゼンテーションをまとめていて、本当にびっくりしましたし、彼らを含め関係者の熱量の高さに感銘を受けました。私がアフリカに関心を持ち始めたのは15年ほど前になるのですが、その頃はアフリカのビジネスに興味を持っている人は本当に少なかったと思うんですね。それが今では、セミナーをやっても急速に参加人数が増えてきている。そうした潮流は、今回のピッチコンテストでも感じられましたね。

不破 確かにそうですね。

渋澤 NINJAの名称にも「with Japan」とあるように、まさに「Made with Japan」というのがこれからの令和時代の成功体験になればいいと僕も期待しているんです。かつての昭和時代の「Made in Japan」というものは、主に先進国の大量消費を満たす大量生産として大成功した。しかし、それがアメリカなどからバッシングを受ける結果となり、平成時代は「あなたの国で作ります」と「Made by Japan」に変わったわけです。それはそれで一定の成果があったのですが、これからの令和時代は「Made with Japan」になってほしいなと本当に思っていて、それをドライブするのが主に10~30代なんじゃないかと考えているんです。彼らは30年後、40~60代になっているので、明らかにこれからの社会のど真ん中にいる世代ですよね。しかし、高齢少子化社会の日本において、彼らは人口的マイノリティーです。一方で、アフリカではその世代が明らかなマジョリティーなわけです。だから、相互関係の「Made With Japan」は、これからの日本にとって大事な国家ビジョンだと思います。

―― アフリカという地はブルーオーシャンで、そこで「Made with Japan」としてタッグを組めれば、大きなビジネスチャンスになると。

不破 僕も渋澤さんがおっしゃるとおりに思っていますね。今回のピッチコンテストでも、「with Japan」をどう実現するかが一番の目的だったんです。一つは法人間の連携を形にすることで、今回は8社ほどの日本企業に賛同いただいて、現地スタートアップのマッチングができました。民間企業同士の連携で、お互いビジネスとしてWin-Winのシチュエーションがつくれたというのは非常に大きな成果なんじゃないかなと思っています。もう一つは、法人だけではなく一般の方々の関心を高めること。それについては、幅広い世代の一般の方々が2,000名以上も参加してくださったので、その意味でも「with Japan」が体現できた一つの事例になったといえるのではないかと。

渋澤 まさに「with」というところがすごく大事なポイントですよね。

不破 はい。彼らがお互い成長することによって、持続性のあるビジネス、持続性のある活動になってきますし、それが社会課題への貢献につながっていくと思うんですね。そういったものを、我々は今後も種を蒔いてつくり出していきたい。正直、僕らだけでは何もできないので、さまざまなステークホルダー、関係者のお力を借りつつ、徐々に花を咲かせていきたいと思います。

不破直伸氏。投資銀行、スタートアップ役員を経て家族とウガンダに移住。現在はJICAのスタートアップ・エコシステム構築専門家。
不破直伸氏。投資銀行、スタートアップ役員を経て家族とウガンダに移住。現在はJICAのスタートアップ・エコシステム構築専門家。

アフリカ向けファンドへの関心は徐々に高まりつつある

―― ピッチコンテストでは日本の民間企業とアフリカの起業家のマッチングが実現しましたが、そもそもアフリカではスタートアップ企業の資金調達はかなり難しいのでしょうか?

不破 ファンドは成長途上で、2020年はコロナの影響を受け投資額は減少しましたが、投資数は順調に増加しています。例えば日本のベンチャーキャピタルが投資するアフリカの企業はトップのトップの上澄みの部分で、JICAが支援しているベースの部分というのは、ビジネスとして未だスタートする前やスタートし始めたばかりの企業が中心となり、信用・実績や担保も十分に持たないので金融機関もあまり相手にしてくれないんです。現地は担保主義なので、担保もない若い起業家は身動きがとれない。どうにもできない中で、じゃ、一緒に見つけに行こうよ、ということで、一社ずつ伴走しながら支援しているというのがJICAの現状です。

―― 変化の手応えはありますか?

不破 まだまだスタートしたばかりで手応えというほどではありませんが、現地の人のマインドセットは徐々に変わってきているんじゃないかなと思うんです。これ、すごく大事なところだと思うんですが、自分の斬新なアイデアを形にすることによって自信がつき、事業として活動し始めている方もいますし、それを見た人のマインドセットもまた、「あ、こういうふうにできるのか」と変化しますから。そういう影響が徐々に広がっていくと、大きな効果が出てくると思いますね。

―― 日本でもアフリカに目を向ける投資家は増えているのでしょうか。

不破 日本にもアフリカ向けベンチャーキャピタルがあり、ここに投資している個人の数も増えてきています。2~3年前は5億円を集めるのが大変だったのに、今では4倍にも増えている。投資家層の裾野が広がってきていて、徐々にではありますが、みんなが関心を持ち始めていると思っています。

渋澤 でも、ポテンシャルを考えると、僕はまだまだだと思います。これはアフリカに対してだけではないのですが。日本には、いわゆる「タンス預金」が全国で50兆円とも100兆円とも言われているんですね。もし1万札を丁寧に50兆円分重ねると、どれぐらいの高さになると思います? 100万円で1cmと考えると、なんと500kmなんです。500kmですよ。宇宙ステーションにぶつかってしまうぐらいの量のお金が、社会的にも経済的にも何の役にも立っていない。その0.01%でもアフリカへ回したら、すごいことですよね。

©getty
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不破 確かに! ただ、実際のところ、個人がアフリカの企業に投資する方法が、日本だとなかなかないんですよね。

渋澤 それが一つの課題で、まだまだだと言ったのはそういうこともあるんです。若い人がアフリカに関心を持って、「僕も10万円投資したい」と言っても、現状ではなかなか手段がない。でも、クラウドファンディングといったマイクロファイナンス的な手段はだんだん広まってきていますし、これからも増えると思います。

―― 一般の人々の中にも、アフリカのような途上国の役に立ちたいという社会貢献への意識は高まっていると思いますが、どんな行動がどう役立つのか、実感できないという部分もあると思います。

渋澤 実感するのは実は簡単で、消費です。例えば、私が事務局を務めているアフリカ起業支援コンソーシアムでは大企業の会費を財源としてアフリカで起業する日本人を支援するプログラムを実施していますが、最優秀賞を受賞したのはウガンダのシングルマザーに職を与えるために現地でプリントバッグをつくって日本で売るというビジネスを立ち上げた女性です。そのバッグを日本で買えば、アフリカ社会における弱者の雇用につながるわけで、かなりダイレクトにインパクトを感じることができると思います。

不破 そうですね、自分で物を直接買うというのが一番分かりやすいですね。自分の欲求も満たされて、経済活動につながって現地に利益が還元されて、社会貢献できていることが一番実感しやすいですよね。ちょっと価格は上がりますが、フェアトレードの製品を購入するのもいい。

渋澤 投資という面では、先ほども言ったクラウドファンディングなどはインターネットベースのものですので、自分のお金がどういうふうにどこに使われているかを自分のデバイスで見ることができて、実感が湧くんじゃないでしょうか。

子どもたちが生きる未来の社会に、私たちは何が残せるか

―― 渋澤さんは折に触れ、投資はMe(自分)のためだけではなくWe(大勢)のためにという側面が大事だと語っておられます。具体的にはどういった投資手法が考えられるのでしょうか?

渋澤 最近はインパクト投資が一つの大きな流れになりつつあります。これは、私的に言えば近代的『論語と算盤』のように思っているんです。『論語と算盤』は、簡単にいうと道徳観と実利の両方を実践していく、ということだと思いますが、インパクト投資もまた、社会的インパクトと経済的リターンの両立を目指す投資です。

不破 まさに『論語と算盤』の現代的意義ですね。

渋澤 インパクト投資に対する関心は、日本でもこの4~5年で高まってきたと思うのですが、日本から途上国へというのは本当に少ないし、以前より多くなったといっても、資産運用のレベルで考えるとまだ全然よちよち歩きにも入っていない程度の金額です。一方、SDGsなどの目標により、ソーシャルビジネスの可能性はますます高まっている。そういう意味では、日本の上場企業でも中小企業でもスタートアップベンチャーでも、さまざまな社会的課題を抱えているアフリカなどの途上国で雇用をつくり出し、成長の伸び代を支え、社会的課題に応えながら、いろいろなビジネスを展開することができるはずです。

―― そのためにも、インパクト投資が重要になってくるわけですね。

渋澤 そうですね。ただ、そこで日本のビジネスパーソンに言いたいのが、「3つの言葉を絶対使わないでください」ということなんです。それは、「前例がない」「組織に通らない」「誰が責任取るんだ」。

渋澤健氏。外資系金融、ヘッジファンドを経て、現在自身の会社2社の代表を務める。
渋澤健氏。外資系金融、ヘッジファンドを経て、現在自身の会社2社の代表を務める。

不破 あぁ、よく聞く言葉ですね(笑)。

渋澤 この3つの言葉が、日本の良さを世界に浸透させることを妨げているんですよ。これだけをなくせば、すごく日本はよくなると思います。

―― なるほど、それは若い世代にも管理職世代にも聞いてほしいお話ですね。不破さんは、今後の目標とされていることがありますか。

不破 僕個人ということではないかもしれませんが、以前JICAの人から「JICAの目標というのは、JICAをなくすことだ」と聞いて、そのとおりだなと思ったんです。JICAは開発途上国への国際協力を行う機関ですが、「開発支援」という単語、もっといえば「SDGs」といった単語が不要になり、世界からなくなる日が来るとしたら、それこそが僕たちのゴールだと。つまりはJICAという組織がなくなることを目指しているわけで、それは僕自身の職を奪うことでもあるんですけど(笑)。

渋澤 確かにそうですね(笑)。

不破 一方で、この仕事がなくなるということは、多分新しい仕事が生まれてくるはずだとも思っています。ただ、僕は今38歳ですが、僕の中では自分の人生というより、自分の子どものためにこういうことをしてあげたい、こういう社会になっていてほしいということのほうが中心になりつつあるんですよ。地球は、今のままで行けばすべての天然資源が枯渇してしまい、紛争が多発するような世界になってしまうかもしれない。そんな世界を自分の子どもたちの未来に残したいですかと聞かれたら、やっぱり嫌だな。だから、脱プラスチックなども含め、環境問題にしっかり取り組んだ社会を子どもたちに残していきたいし、残したい社会を自分がつくっていきたいと思っています。この記事を読んでいる皆さんにも、自分が次の世代にどういう社会を残したいか、考えてみてもらえるとうれしいですね。たとえば2100年になると人口は90億にも上っているはずなので、その世界に何が残っていてほしいか。

渋澤 2100年には、世界三大都市がナイジェリアのラゴス、コンゴのキンシャサ、タンザニアのダルエスサラムと、すべてアフリカになるといわれているんです。8,000万都市なんですね、3つとも。インドや中国は2050年頃に大きくなるのですが、2100年には縮小してしまい、逆にアフリカは一気に増えるんです。そう考えると、今、アフリカに支援や投資を行っていくのは、非常に意味があることなのかなと思っています。渋沢栄一が現代に生きていれば迷わずアフリカに投資しているかもしれませんね。

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2100年に人口8000万人で世界三大都市になると言われているナイジェリアのラゴス、コンゴのキンシャサ、タンザニアのダルエスサラム(上から順に)。 ©getty
2100年に人口8000万人で世界三大都市になると言われているナイジェリアのラゴス、コンゴのキンシャサ、タンザニアのダルエスサラム(上から順に)。 ©getty

不破 今のラゴスの人口は、非公式で2,000万を越えているといわれていますが、その多くがスラムに暮らしているんですよね。今回のコロナのような危機があるたびに、富裕層はさらに富み、貧困層は下に沈み、貧富の差が加速していくと。アフリカではコロナで4,000万近い貧困層が生み出されているという話もありますし。人口が増えていくのは非常に魅力的なんですが、失業率もどんどん上がり、インフォーマルな仕事に就く貧困層がどんどん増えていくんじゃないかと。

渋澤 8,000万人のうち4,000万人が無職という可能性も考えられないわけじゃない。仕事がない若い層が多いというのは絶対駄目ですよ。それは大きな社会的不安定要素を持っていると思います。

不破 とにかく雇用を創出することが絶対的に必要で、だからこそ今、現地の起業家を支援することが大切なんです。

渋澤 まさにそこにつながりますね。そのフェーズでこそ「Made with Japan」、日本のプレゼンスを高めていくべきだと僕も思います。

渋澤 健​(しぶさわ・けん) シブサワ・アンド・カンパニー(株)代表取締役。コモンズ投信(株)取締役会長・創業者。1961年、神奈川県生まれ。国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立し、同年シブサワ・アンド・カンパニー(株)を設立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の企業経営者団体である経済同友会の幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長も務め、政策提言書の作成にも携わっている。近著に『SDGs投資 資産運用しながら社会貢献』(朝日新書)など。渋沢栄一の玄孫(5代目)にあたる。

不破 直伸(ふわ・なおのぶ) 国際協力機構(JICA)スタートアップ・エコシステム構築専門家。1982年、三重県生まれ。ボストン大学大学院・金融工学専攻。卒業後、投資銀行資本市場部門にて企業の資金調達などを担当。並行してIT系のスタートアップ役員などを務めたのち、ウガンダに移住。JICA産業開発・公共政策部での勤務を経て、2018年からはJICA専門家としてエチオピアで中小企業への経営指導や政府機関職員の能力向上などに携わると同時に、起業家支援に取り組んでいる。

 提供:独立行政法人国際協力機構(JICA) https://www.jica.go.jp/

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写真 三宅史郎