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エリートではないけれど…女子バレー・江畑幸子31歳「笑顔の引退」の理由

 3月25日、1人のバレー選手の引退がひっそりと発表された。江畑幸子、31歳。コロナ禍もあって、大きく報じられることはなかったが、彼女なくして日本女子の28年ぶりの銅メダルはなかった。

 2012年のロンドン五輪。メダルを懸けた天王山となったのは、準々決勝の中国戦だった。セッターの竹下佳江が「エバ(江畑)と(木村)沙織がどんなボールも上げれば決めてくれた」と振り返るように、木村と共にチーム最多の33点を叩き出し、フルセットの末に勝利する。

銅メダルを獲得したロンドン五輪 ©JMPA

 木村のように攻守に長けた選手が「エース」と呼ばれる日本で、超攻撃型の江畑は異彩を放った。

「セッターにレシーブが返った理想的な状況ではなく、むしろ守備が崩されてからの苦しいトスを打つのが抜群にうまかった。Vリーグでも対戦相手の監督が『荒れ球を打たせたら江畑の右に出る選手はいない』と絶賛したほどでした。エース木村の対角が埋まったことで、日本は世界でメダル争いができるようになった」(スポーツライター)

 バレー・エリートでなかった彼女が、日本代表になれたのは、ここ一番の勝負強さがあったからだ。

 通常、Vリーグに進む選手は、名門校で活躍しており、高校3年の夏には進路が決まっている。全国区の強豪とはいえない秋田の高校の3年生だった彼女は、秋に地元で開かれた国体で、エースとして大活躍。予想外の3位入賞を果たし、Vリーグ入りが決まったのだ。

“鈍感力”も武器だった。