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大富豪がなぜ金メダリストを射殺? 真相は…

2021/04/18
 

 近年、映画業界では事実に基づく物語が数多く作られている。中でも、2014年に公開された映画『フォックスキャッチャー』は記憶に新しい。米国三大財閥の1つ、デュポン家の御曹司ジョン・デュポンが、自らスポンサーを務めるレスリングチーム所属の選手兼コーチである五輪金メダリスト、デイヴ・シュルツを射殺した事件を描いた作品だ。しかし、この映画を見ても「なぜ、こんな事件が?」という最大の謎は分からない。この作品は一貫してデイヴの弟マーク・シュルツの視点で描かれ、映画終盤に弟がデュポンの元を去った後、兄デイヴは唐突に射殺される。そして、ミステリアスなムードを残したまま映画の幕は下りる。

 果たして、事件の真相は? その謎に真正面から切り込んだドキュメンタリーがネットフリックスで配信中の『フォックスキャッチャー事件の裏側』だ。こちらの作品では、目の前で夫を殺されたデイヴの妻やジョン・デュポンが率いたレスリングチーム「フォックスキャッチャー」に所属した選手たちが当時の状況を生々しく語り、多角的に事件の全貌を明らかにしている。

 インタビューの合間には、事件当事者が映るホームビデオが流れる。そこから垣間見えるのは「家族」というものの温かさと闇の深さだ。デイヴは超一流選手でありながら家庭を大切にする好漢。チームメイトとも家族同然の付き合いをする姿が映る。対するデュポンは、1人で溺れそうになりながら泳ぐ幼少期の姿が映し出される。彼は母親への愛憎を抱えて育ち、それがあらゆる言動に歪んだ形で現れた。そんな男の前に経済力以外のすべてで敵わないデイヴが現れる。しかも彼はまったく金に頓着しない。人柄もよく誰からも慕われる。人間存在として抗いようのない圧倒的な差……。それが凶弾へと繋がるのだ。

 本作は、劇映画を見て狐につままれた気分になった人にこそ見てほしい作品である。

INFORMATION

『フォックスキャッチャー事件の裏側』
https://www.netflix.com/jp/title/80044093

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