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入会金30万円で「年収3000万円保証」…仮想通貨バブルで暗躍する“情報商材業者”の悪質な実態――文藝春秋特選記事

入会金30万円で「年収3000万円保証」…仮想通貨バブルで暗躍する“情報商材業者”の悪質な実態――文藝春秋特選記事

2021/04/22

「文藝春秋」4月号の特選記事を公開します。(初公開:2021年3月24日)

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 代表的な仮想通貨(現在の呼称は暗号資産、以下同)のビットコイン価格が昨年秋から異次元の暴騰を記録し、円建て価格はこのところ1枚600万円台での取引が続いている。

 こうした暗号資産投資に関するノウハウなどの情報を、ネット上の動画やDVD、それにPDF形式の電子媒体といった形で、投資に関心ある人々に向けて言葉巧みに売り込んでいるのが情報商材業者だ。

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 だが、情報商材業者が「自分の有料クラスに入会すれば、有益な情報を提供する」と持ち掛けて購入を勧める投資案件は、大半が違法行為や詐欺的要素の強い儲け話である。

「フェイスブックを日本に定着させた」と自称する男

 例えば2017年から18年にかけて大流行したICO(Initial Coin Offering=暗号資産の新規公開)の場合、簡単な目論見書の作成だけで手軽に実施できるため、実体のない詐欺的なものが横行。投資家に付与されたトークン(証券的な暗号資産)は、海外の暗号資産取引所に上場された直後に価格が暴落し、その後は全く取引されない事態が頻出した。

「ICOのトークンは現金では購入できない仕組みで、まず主要な暗号資産のビットコインかイーサリアムを購入し、これと交換することで入手できます。ICOの実施者や情報商材業者の中には、この2種類の主要な暗号資産をかき集める目的で実体のないICOを実施し、その後は姿を消してしまうという輩が大勢いました」(暗号資産に詳しい弁護士)

松宮氏のPR動画(YouTubeより)

 また、情報商材業者の中には、独自発行という触れ込みの暗号資産を返金保証付きで入会者にプレセール(予約販売)したものの、技術的問題などから発行が大幅に遅れた上に価格が暴落し、購入者から訴訟を起こされたケースも存在する。暗号資産投資に関する情報商材を販売する「フィンテックエイジ」(東京都千代田区)社長の松宮義仁氏が16年に販売した「NAGEZENI(ナゲゼニ)」がそれだ。

「世界最大のSNSであるフェイスブックを日本に定着させた立役者」と自称する松宮氏は、「SNSを利用しておカネを稼ぐ方法を伝授する」とうたって入会金30万円の塾を開講。入会者に「年収3000万円保証」などと吹聴し、「上場後に購入価格を下回れば返金する」とする全額返金補償(期限は18年12月末まで)を付けて、ナゲゼニを大々的に販売した。

「何もしなくてもドンドンお金が増える」と謳っていたPR動画(YouTubeより)

 東京都内に住む50代前半の投資家、岡部修一氏(仮名)も松宮氏の塾に入会し、プレセールで上限の約400万円分のナゲゼニを購入したうちの一人だ。岡部氏は松宮氏の経済知識レベルを確かめようと17年早春、塾の講義終了後に居酒屋で開催される懇親会に参加した。松宮氏の発言の矛盾点を問い詰め、「事業が予定通り進んでいないのなら、約束通り返金して欲しい」と迫った。岡部氏が回想する。