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旭川イジメ凍死事件 なぜ学校は爽彩さんのSOSに耳を傾けなかったのか

「重大事態」と判断するタイミングは何度もあった

2021/04/25
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 北海道旭川市のいじめ凍死事件に多くの人が関心を寄せている。文春オンラインが報じた記事によれば、学校が十分な対応をしていなかった様子が見て取れる。その結果、当時中学校2年生の廣瀬爽彩(さあや)さん(14)は自宅を出たきり、行方不明となった。そして2021年3月、爽彩さんの遺体が見つかった。いったい、何をすれば、爽彩さんの命を救えたのか。そして、今からでもできることは何なのか――。

 多くのいじめや学校の不適切指導を取材してきた経験から、この痛ましい事件について検証してみたい。

何のための「いじめ基本方針」なのか

 爽彩さんがいじめを受け始めたのは2019年4月中旬ごろだったという。子どもたちの溜まり場になっていた児童公園で2学年上のA子と知り合い、また、ソーシャルゲーム「荒野行動」で知り合ったA子の友人・B男とも、この公園で出会った。さらに、別の中学校に通うC男とも知り合い、そうした関係の中でいじめが始まっている。この段階で、いじめの実態に気がついた周囲の大人たちはいない。

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 4月には一度、爽彩さんの母親が担任にいじめに関する相談をしていた。その後、5月に2回、6月に1回、それぞれ相談をした。しかしながら、担任は真剣に受け止めようとしていない。担任は「あの子たちはおバカだからイジメなどないですよ」「今日は彼氏とデートなので、相談は明日でもいいですか?」と発言したという。担任としては、まだ中学に入学したばかりのため、保護者が過剰に心配したと判断したのかもしれない。だとしても、いじめの有無は確認できずとも、訴えがあったことは、学校内で設置されたいじめ対策組織で共有しなければならなかった。

旭川市いじめ防止基本方針」(2019年2月)によると、各学校でも個別に「学校いじめ防止基本方針」を作ることになっている。それによって「個々の教職員による対応ではなく組織として一貫した対応」が必要とされている。そして、いじめの学校対応を明示することで、児童生徒および保護者に「安心感を与えるとともに、いじめの加害行為の抑止につながる」とされている。市内の各中学ともに、ホームページに方針が掲載されている。いじめ対策組織で方針を協議すべきであった。

 学校でのいじめ問題を取材すると、学校側が「いじめ」か「いじり」か「悪ふざけ」かの違いにこだわるあまり、いじめの認知が遅れるケースが少なくない。その認知の遅れは、いじめに関するアンケートに取り方や解釈によることもある。