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富裕層のライオンズファンのみが楽しめる“秘密のVIPエリア”に潜入

文春野球コラム ペナントレース2021

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 豊かな自然に包まれた地上の楽園メットライフドーム。東京から徒歩1分(※東京都東大和市多摩湖2丁目より計測)という抜群の好立地にありながら、都会の喧騒から完全に隔絶された白亜の城は、紳士淑女たち憧れの社交場です。「やぁリトルレディ、メットライフドームの入場券が2枚あるんだけど、僕とランデブーしないかい?」「まぁ素敵、でもとってもお高いんでしょう」「ハハハ、なーに、ちょっと自宅がフレンドリーシティでね、招待されたのさ」なんてアバンチュールも日夜展開されていることでしょう。筆者調べでは「埼玉県の人気野球場ランキング」で42年連続で第1位に輝いている、地域ナンバーワンのスタジアムです。

 そんな楽園の地下には、ごく限られた富裕層だけが入場を許されるという、秘密のV・I・Pエリアが存在します。その名も「アメリカン・エキスプレス プレミアム™ ラウンジ」。贅の限りを尽くしたもてなしと、最高の観戦体験が得られるというプレミアムラウンジに、このたび僕は潜入する機会を得ることができました。庶民のみなさまには一生縁がない別世界かもしれませんが、ぜひ現地からのレポートをご覧いただき、「あぁ、これが富裕層の世界か」と足の指でもくわえながら見ていただければと思います。

野球場の地下にこんな別世界があるだなんて!

 こちらのラウンジはホームベースの後方、バックネット裏スタンドの地下に存在します。試合中継でも球審の後ろにチラチラと人影が見えるかと思いますが、あれは中継スタッフではなく富裕層です。地下に広がる約1000平方メートル(※東京ドーム約0.02個分)という広大な空間に、203席の座席(プレミアムエキサイト™ シート)と280人収容の飲食エリアを備えたラウンジは、まさにパラダイスと言ってもいい場所でした。

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 4席550万円(税込)のシーズンシート購入者などが集うというラウンジに「西武ホールディングスの株を買って大損こいた庶民ですが、入場してもよろしいでしょうか……?」とおずおずしながら潜入する僕。せめてもの礼儀として新品の靴を履いてはきましたが、それでもまだ気遣いは不足していたかもしれません。入った瞬間に感じるゴージャスな気配は、まるで川越プリンスホテルのロビーにでも来たかのよう。出迎えてくれるスタッフさんたちも野球場のそれとは一線を画した接客業のプロといった雰囲気で、手にしたスポーツ新聞が少し恥ずかしい。「ユニフォームじゃなくスーツを着てくるべきだった……」と反省せずにはいられません。

 3エリアからなるラウンジの入場口左手には、上品なカウンターで各種のお酒を楽しめるバーエリアが。入場口右手にはホテルライクな食事を楽しめるブッフェエリアが。そして、最奥のグラウンド沿いには臨場感あふれる観戦が楽しめるプレミアムエキサイト™ シートがあり、そのいずれもがかつてない体験をもたらしてくれるものばかりでした。球場改修を経て、素晴らしい観戦環境を提供してくれるようになったメットライフドームですが、このラウンジに一度足を踏み入れると「ここから一歩も出る必要ナシ」と感じるほどの別天地。なかに入ってこんなに興奮したのは、初めてIKEAに行ったとき以来です。

まるでライオンズ博物館!バーエリアに展示された貴重な品々

 まずはバーエリアのご紹介から。こちらはプレミアムエキサイト™ シートを年間契約で所有する富裕層に限らず、バックネット裏スタンド席の各種プレミアム™ シート購入者ならば誰でも楽しむことができるパラダイスの一丁目です。一丁目とは言ってもシンボリックなオブジェクトはすべてこのエリアに集約されており、ちょっとしたライオンズ博物館のよう。

 まず目を引くのは歴代の日本チャンピオンフラッグが周囲を彩る、200インチの大型プロジェクター。ラウンジ内には65インチの大型モニターも27台設置されており、360度すべての視野で野球観戦を楽しむことができます。大型プロジェクターと正対するようにして佇むバーカウンターは、美しくライトアップされ文字通りキラキラと輝いています。

 並べられたウイスキーのボトルや、金色に輝くビールサーバーは、すべてのお酒がここにあるとでも言わんばかり。庶民用通常スタンド席で観戦しているときの「さっきハイネケンの売り子さんいたよな……?」「おクチがハイネケンの気分になってしまったな」「ハイネケンの娘がなかなかこない……」といった時間の浪費はここには存在しません。好きなものを、好きなときに、好きなだけ、楽しめる。

 あえて待ち時間的なものを挙げるならば、2025年に完成するというオリジナルウイスキー「ライオンズオリジナルイチローズモルト」(※イチローとは無関係)を待つ4年、でしょうか。4年後のウイスキーを待つ心の「余裕」が、最上のアミューズとなる。「4年後、プリンスホテルはいくつ残っていると思う?」なんて会話を楽しみながらいただくお酒は格別のものとなるでしょう。

 さらにこのエリアには充実の施設群が。まず、オンラインストア等では手に入らない選手モデルの「本物の」グローブやバットを取り扱う富裕層向けショップ「チームストア プレミアムラウンジ」。そして「このエリアのお客様はトイレを汚さないだろう……」という見立てのもと、清掃しやすいタイル貼りなどではなく、ホテルのトイレのような上質空間でゆったりと踏ん張れるプレミアムトイレ。車イスでも利用できるトイレや授乳室、さらに加熱式タバコ専用の喫煙室まで備え、あらゆる用事がここで済むようになっています。

 展示物も充実。2008年アジアチャンピオンのトロフィーを含む栄光の品々を展示するスペースには、球場完成後初の公式戦で福田赳夫元首相が投じた始球式のボールなども展示されています。壁面には手塚治虫先生が描いたレオ・ライナの複製原画と、歴代レジェンドたちのユニフォームが展示されており、プレミアムトイレにつながる通路に展示された栗山巧選手のユニフォームは、従来の「神」という印象と融合して「トイレの神様」といった威厳を備えています。清原和博レジェンドのユニフォームが何故か展示されていないことを除けば完璧と言っていいでしょう。

富裕層はさすがに盗みゃしないだろうという性善説で、栄光の品々を展示。
富裕層の健康を守るため二酸化炭素濃度を測定する装置も設置。うーん、富裕層の空気は美味い!
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