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「本木雅弘が苦手な納豆を例に語り始めて…」 内田也哉子、中野信子が明かす“なんで結婚しちゃったのか”の答え

内田也哉子×中野信子トークイベント#4

 内田也哉子さんと中野信子さんの共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)の刊行を記念して、4月11日に行われたオンライントークイベント。ZoomウェビナーとYouTubeライブ中継(現在、YouTubeにてアーカイブ動画を公開中)を合わせて1800名超の視聴者を集めたトークの全貌を公開します。(全6回中の4回目。#1#2#3#5#6を読む)

(文:小峰敦子、撮影:山元茂樹/文藝春秋)

 

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家族を持つメリット、デメリットとは?

Q.【30代女性より】家族を持つメリットは何ですか?

内田 これは究極の質問ですね。

中野 これは社会的なメリット、認知的なメリット、生物学的なメリットがそれぞれあるんです。社会的なメリットというのは、「あなたもう結婚はしないの?」みたいなことを言われる面倒くささから逃れられるというメリット。それから社会的証明としてのメリットですね。結婚していることを重要視する人はまだたくさんいるので。

内田 日本ではけっこう多そうですね。

中野 大きな企業とか官公庁とか、オフィシャルな性格の強い組織にはそういうところがあると思います。また、認知的なメリットとしては、近くに自分と違う存在がいることによって豊かに過ごせる。今、メリットしか話してないんですけど、あとでデメリットも話しますからね(笑)。それから生物学的なメリット。これは対談でもお話ししましたが、アリー効果というのがあるんです。

内田 人間は生物としてあまり強くない。脆弱な身体で、柔らかい肉で、逃げ足も遅いから、他の動物に食べられてしまう。でも集団でいれば強くなるということですね。

中野 そうです。群れをつくることによって生存確率がすごく大きく上がるんですよ。だから一人でいるよりも2人でいるほうが安全、2人よりも3人、3人よりも4人。群れが大きくなればなるほど、安全度が増すんです。それをアリー効果といいます。アリー効果があるので、群れになりたがる性質をそもそも脳に備え付けているんですね。メリットが何かということを問う前に、人間とは「家族をつくりたがる性質がそもそもある生物種ですよ」ということはいえる。

内田 とはいえ、たくさんデメリットもあるんですか。家族を形成している私たちが言うのもなんですが。

中野 どの口が言うか、ですね。家族を持つデメリットは、集団となるとルールが生じますので、そのルールから外れた人に対して、非常に冷たく当たるという現象が生じる。これ、ムラ社会の弊害ということで語られることが多いけれども、家庭でも生じるんですよ。

 

内田 家族をつくるとは、一つのルールを掲げるということでもありますよね。一人ならばすべて自分の自由になるわけで、やっぱり家族という族になった途端にそれが生じる。

弱い立場の人が犠牲になりがちなルール

中野 家族のどの立場にあっても、そのルールの犠牲になることがあるんです。よく耳にするのは、出産後のお父ちゃんたちですね。出産後には母子のルールが生まれるのに、お父ちゃんは大縄跳びに入り損ねるみたいにそのルールにうまく乗り損ねて、家族から排除される。お母さんは子どもが一番大事になって、「自分一人でこんな大変な思いしているのに、何であいつは」みたいなことをお父ちゃんに対して思うようになるわけです。お父ちゃんも疎外感を味わっている。よくあるのは「奥さんはいつも神経質だけど、ちょっとどうしよう」みたいな気持ちになることですが、もっと深刻な例も沢山あります。

 また、家族のルールでは、世間体を気にして、家族としての体裁をととのえることを優先してしまうから、弱い立場の人が犠牲になりがちなんですね。子どもや奥さんがDVに遭うこともあります。海外の例ですが、フランスでは2週間に1回ぐらい、女性がDVで亡くなっているんですよ。非常に高確率で暴力の犠牲になりやすいのは女性なんです。例えば、女性の身体を思いやって男性が力の要ること、危ないことを受け持つのは、男性に対する逆差別だという声も盛んに上がりますが、女性は物理的に男性より筋力が弱くできてしまっています。人類の身体的特徴というのはそんなに簡単に変わるものではないので、やはり肉体的に脆弱なほうが犠牲になりやすいのは、昔から変わらずなんです。

 もっと犠牲になっているのは子どもです。世間体を重視する家庭の中で起こりやすい最大のデメリットは、性的虐待です。対外的に非常に体面を気にして完璧に見える家では、性的虐待が疑われると主張する人もいるぐらいです。

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