昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「過去1000年で最も重要な人物は?」日本人で唯一ランクインした葛飾北斎が「世界初のポップアーティスト」と言える理由

HOKUSAI TIMES vol.1

PR

筆で世界を変えた男、葛飾北斎の生涯や偉業を3回にわたって紹介する。第1回は、北斎の人物像や世界に与えた影響に迫る。江戸時代の市井の絵師にもかかわらず、19世紀最高の芸術家として知られる北斎とは、一体何者なのか。その実像に迫る。

葛飾北斎
「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
葛飾北斎
「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

世界で最も重要な人物100人に選ばれた!

 アメリカの有名なフォト・ジャーナル誌『LIFE』が1998年に「過去1000年の間で最も重要な人物はだれ?」という調査を行い、上位100人のランキングを発表した。1位エジソン、2位コロンブスなど、名だたる偉人が上位を占める中、日本人で唯一選出されたのが、なんと葛飾北斎だった。その影響はモネやドガといった絵画における印象派の巨匠たちだけでなく、ティファニーやカミーユ・クローデルらによる工芸や彫刻、ドビュッシーの音楽、フランク・ロイド・ライトの建築など、ジャンルを横断して様々な分野に浸透。19世紀末パリからヨーロッパ全土に広がった一大ムーブメント「ジャポニスム」の原動力ともなった。

「マンガ」などポップアートの原点

 マンガという今や耳慣れた言葉は『北斎漫画』によって広く使われるようになった、と言われる。『北斎漫画』は200人超の弟子に向けて描いた絵手本。そこには北斎の脳の中にあった森羅万象すべてが描かれている。ユニークな表情から、吹きすさぶ風、水の流れなど目に見えないものまで捉えたみずみずしい描写は、海外の芸術家たちもこぞって手本にした。近代を迎えた19世紀後半、パリの美術界は北斎らの影響による「ジャポニスム」の全盛期。人々の生活が大きく変化していくにしたがって、情報伝達手段としての芸術が脚光を浴びるようになり、ポスターという新しいメディアが誕生。そこに現れた新しいスター、ロートレックは『北斎漫画』を思わせる線描を用い、大胆に平面化した彩色に簡潔で力強い文字を配するなど、浮世絵からたくさんのことを学び、大成功をおさめた。チェコ出身で、パリで活躍したミュシャもその技法を受け継いだひとりだ。忘れてはならないのが、ヨーロッパでアートが一握りの上流階級のためだけの存在であったころ、浮世絵は江戸の長屋に住む庶民までもが楽しむ「世界初のポップアート」であったこと。ポスターから現代のマンガにまで影響を与えた北斎は、ポップの象徴「キングオブポップ」と言えるだろう。

葛飾北斎 
「北斎漫画」(一部)
葛飾北斎 
「北斎漫画」(一部)

齢90で世を去るまで描き続ける

 90歳まで生を全うした北斎。これは当時の日本人の平均寿命のおよそ倍にあたる。生涯で描いた作品数は約3万点。20歳から画業を始めたので、単純計算で一日一作を超える驚異的な数字、そして情熱だ。富士山を描いたかの有名な大作『冨嶽三十六景』は齢70を超えて発表されたことをご存知だろうか。なかでも『神奈川沖浪裏』は世界一有名な波の絵と言われ、日本の2024年新紙幣デザインに採用されるなど、今もなお測り知れない影響力を誇る。しかし、順風満帆に思える画業の航海は時に波のうねりに翻弄された。北斎の生きた江戸後期は、病の流行や権力者による表現の弾圧もあった。そんな時代でもひたすら描き続け「世界一有名な日本人アーティスト」へと上り詰めたのが、北斎という男だ。時代や誰かのせいにするのではなく、ただ、自分がやりたいこと、やるべきことを貫き通し「己の人生」を描き続ける。そんな“生きざま”が絵に溢れていることが、今なお北斎が世界中で愛される所以ではないだろうか。「あと5年あれば、真の絵師になれたのに」。これは死の間際、北斎が遺した最期の言葉とされる。この言葉こそが世界を驚愕させたHOKUSAIになり得た最大の理由かもしれない。

次回:北斎の長生きの秘訣に迫る


映画「HOKUSAI」5月28日(金)全国ロードショー
描き続けた生涯、今明かされる、北斎のすべて

時は江戸。幕府によって表現者たちが自由を奪われていた時代に、自分の道を貫き、ひたすら画を描き続けた一人の絵師がいた。誰もが知る"あの波"を生み出した孤高の絵師、葛飾北斎である。本作は残された作品や資料を元に、謎多き天才絵師の生涯に迫るオリジナル作品。若き日の北斎を演じるのは、『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭の男優賞を史上最年少で受賞した柳楽優弥。老年期の北斎は国際的なダンサーとしても知られる田中泯が体現。北斎を見出す版元の蔦屋重三郎に阿部寛。晩年の北斎に最も影響を与える戯作者の柳亭種彦を永山瑛太。そして、北斎の一つ先を行く美人画の大家・喜多川歌麿を玉木宏が熱演する。画狂人生の挫折と栄光。九十歳で命燃え尽きるまで、絵を描き続けた彼を突き動かしていたものとは?信念を貫き通したある絵師の人生が、170年の時を経て、今初めて描かれる。

©2020 HOKUSAI MOVIE
©2020 HOKUSAI MOVIE

出演:柳楽優弥 田中泯 阿部寛 永山瑛太 玉木宏  
監督:橋本一  
企画・脚本:河原れん  
配給:S・D・P
https://www.hokusai2020.com/index_ja.html


もっと北斎の魅力や逸話を知りたい人は北斎情報ポータルサイトへ!
「HOKUSAI PORTAL」→https://intojapanwaraku.com/hokusai-portal

提供:S・D・P