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米国テレビ界の最高名誉エミー賞11冠!『ウォッチメン』の何がスゴい?

2021/05/16
 

 米国テレビ界の最高栄誉、エミー賞で昨年、最多11冠を受賞したドラマ『ウォッチメン』(Amazonプライム・ビデオ他でレンタル配信中)。原作は「アメコミ史上最高傑作」との呼び声高い、コミック界の巨匠アラン・ムーアによるグラフィックノベルだ。2009年に一度、映画化されたが、ラストの展開を原作から大きく改変して賛否両論を呼んだ。

 今回のドラマシリーズは、『ゲーム・オブ・スローンズ』など良質なドラマを量産する米国ケーブルテレビ局HBOが手がけた。果たして今回はどう映像化するのか注目されたが、さすがはHBO、原作通りのドラマにはしなかった。

 舞台は、原作で描かれた1985年から34年後の2019年の米国。そう、現代を舞台にしたオリジナル脚本作品としてアップデートしたのである。だが、単純な“現代”ではない。なんと劇中の2019年の米国大統領は、ロバート・レッドフォード。米国でリベラルな長期政権が続く“パラレルワールド”で物語は展開する。さらに、ドラマ冒頭では1921年の米国史上最悪とされる「タルサ人種暴動」が描かれ、それから98年後の2019年、白人至上主義者による黒人警官の惨殺事件から物語は始まる。

 過去・現在・未来を縦横無尽に駆けながら本作があぶり出すのは、「米国社会の裏面史」だ。奇しくもこのドラマが世に出た翌年、“現実世界”では白人警官による拘束で黒人男性ジョージ・フロイドが死亡し、全米でBLM運動が過熱した。ドラマ企画は数年前から準備されるものだが、脚本家ら制作陣の鋭い眼差しが見事に現実社会の動向と符合した結果だろう。

 タイトルの『ウォッチメン』には、「監視」と「時計(時間)」という意味が込められている。監視社会を生きる我々は歴史から何を学び、どんな未来を歩むべきなのか。現実と虚構を往復しながら、観客に強く問いかけてくる作品だ。

INFORMATION

『ウォッチメン』
https://warnerbros.co.jp/tv/watchmen/

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ご紹介した『ウォッチメン』のHBOドラマはその後、U-NEXTの日本独占配信が決定され、それ以外の配信サービスではレンタルという形になっています。

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