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平均寿命約40歳の時代に90歳まで生きた! 葛飾北斎の健康の秘密は、そば・柚子・ウォーキング!?

HOKUSAI TIMES vol.2

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筆で世界を変えた男、葛飾北斎の生涯や偉業を3回にわたって紹介する。第2回は、江戸時代の平均寿命のおよそ倍にあたる90歳の生涯を全うした、北斎の健康長寿の秘訣を紐解く。一説には、自ら作った薬で病を治したとも。世界のHOKUSAIを支えた食生活やライフスタイルに迫る。

90歳まで生を全うし画力が向上し続けた

 世界が認めた稀代の絵師・葛飾北斎(1760~1849)は画力だけでなく、その健康長寿も注目されている。平均寿命が約40歳だった江戸時代、なんと数えで90歳まで生きたのだ。当時乳幼児の死亡率が高かったことを考慮しても、かなりの長寿と言えるだろう。さらに驚くべきことは、北斎は80歳を越えてから肉筆画に本格的に取り組むようになったという事実。当時は下絵から彩色、仕上げまで筆一本で描いており、定規を使うことなどもってのほか。年を取って筋力が衰えても、北斎の肉筆画は線の美しさが際立っており、乱れを一切見せないという怪物ぶりを発揮。90歳で描いた『富士越龍図』では、長い線を引くのが困難になった分、短い線を重ねて描いていることが指摘されている。それはまさに最後の最後まで絵の向上を目指した北斎の気魄の賜物だ。そんな北斎の強靭な体と集中力を支えたと考えられるものに「食生活」と「足」があった。

健康長寿を支えた食生活と手作りの薬

 酒、タバコとは無縁の生活。好物は蕎麦。1893年に出版された『葛飾北斎伝』には、このような北斎の食生活やライフスタイルが伝えられている。北斎の生きた江戸時代、白米が江戸庶民の間に浸透し、ビタミンB1不足による脚気が流行した。当時は一汁一菜が基本で、白米を大量に食べおかずの量が少なかったからだと考えられる。江戸で患っていた人が故郷に帰るとケロッと治るため「江戸わずらい」などと呼ばれ、奇病として恐れられた。北斎が好んだ蕎麦にはビタミンB1が含まれていることから、北斎の健康づくりに役立ったのではないかと考えられる。また、北斎は60代後半に脳卒中に倒れるが、手作りの薬で回復したとの記録も。柚子を使ったこの薬は、作り方も『葛飾北斎伝』に記載されている。柚子には血流を改善する効果があるとされ、ビタミン類も多く含まれていることから、現代の私たちもぜひ取り入れたい食材だ。

飯島虚心『葛飾北斎伝』
すみだ北斎美術館蔵
飯島虚心『葛飾北斎伝』
すみだ北斎美術館蔵
飯島虚心『葛飾北斎伝』すみだ北斎美術館蔵
柚子を使ったレシピも現存?
飯島虚心『葛飾北斎伝』すみだ北斎美術館蔵
柚子を使ったレシピも現存?

80代で片道250キロを往復する驚異的な健脚

 歩くことも、長寿を支えた要素のひとつかもしれない。北斎の生まれた東京都墨田区から、長野県小布施町まで、片道およそ250キロ。北斎が豪農商・高井鴻山の招きで小布施町を訪れたのは、80代の半ば頃。丸2日かかる道中を、少なくとも4回往復したと言われる。車や電車のない時代、山越えの道を歩いて往復するというのは、どれほど険しい道のりであるか想像できるのではないだろうか。それを80代でやってのけたというのだから、驚くほどの健脚だ。また、北斎は絵を描く傍ら50代から日本各地を旅し、風景をスケッチしていた。中でも富士山に心奪われ、傑作『冨嶽三十六景』を72歳で発表。全国各地の名だたる滝を描いた『諸国瀧廻り』も同じ頃に出版されている。全国を歩いて巡る健脚が、北斎の健康長寿を支えたと考えるのが自然だろう。「老化は足から」という言葉もある。自分の足で歩き、自然に触れ、美しい景色に心動かす。長引くコロナ禍で運動不足が叫ばれる中、今こそ北斎の「歩く」ライフスタイルを取り入れてみてはいかがだろうか。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」

次回:江戸幕府による北斎への弾圧


映画「HOKUSAI」5月28日(金)全国ロードショー
今だから、見えるものが、きっとある―。

腕はいいが、食うことすらままならない生活を送っていた北斎に、稀代の版元・蔦屋重三郎が目を付ける。しかし絵を描くことの本質を捉えられていない北斎はなかなか重三郎から認められない。さらには歌麿や写楽などライバル達にも完膚無きまで打ちのめされてしまう。「俺はなぜ絵を描いているんだ?」ともがき苦しみ、生死の境まで行き着き、大自然の中で気づいた本当の自分らしさ。北斎は重三郎の後押しによって、遂に唯一無二の独創性を手にするのであった。ある日、北斎は戯作者・柳亭種彦に運命的な出会いを果たす。武士でありながらご禁制の戯作を生み出し続ける種彦に共鳴し、二人は良きパートナーとなっていく。60代後半を迎えたある日、北斎は脳卒中で倒れ、命は助かったものの肝心の右手に痺れが残る。それでも、北斎は立ち止まらず、旅に出て富嶽三十六景を描き上げるのだった。そんな北斎の元に、種彦が幕府に処分されたという訃報が入る。信念を貫き散った友のため、怒りに打ち震える北斎だったが、「こんな日だから、絵を描く」と筆をとり、その後も生涯、ひたすら絵を描き続ける。描き続けた人生の先に、北斎が見つけた本当に大切なものとは?

©2020 HOKUSAI MOVIE
©2020 HOKUSAI MOVIE

出演:柳楽優弥 田中泯 阿部寛 永山瑛太 玉木宏  
監督:橋本一  
企画・脚本:河原れん  
配給:S・D・P
https://www.hokusai2020.com/index_ja.html


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提供:S・D・P