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2021/05/20

source : 文藝春秋 2013年12月号

genre : エンタメ, スポーツ

力士同士の距離感

武蔵川 土俵の上で戦うんだから、そういう関係のほうがいい。特に横綱はね。でもいつも支度部屋が隣だし、夏巡業の時には若い衆が、「うちの貴横綱からケーキです」って、届けてくれました。

貴乃花 僕の誕生日がちょうど夏巡業中だったから、若い衆や床山さんがたくさん買って来るんだ。本当は、現役時代から話をしたかったんだよね。仲良くできるものなら、仲良くしたくてしょうがなかった。

©文藝春秋

武蔵川 でも、力士同士は距離を取るのも大事だと思う。今の現役力士たちが、番付発表の日に一緒にゴルフに行くなんて、僕には信じられない。

貴乃花 当時から、「将来的には親方になって、その時は横綱の経験を基盤としていろいろな話が出来るようになるだろう。それが社会貢献にもなっていくかも」という考え方はあった。だから現役時代は仲良く話をしなくとも、お互いの立場で雌雄を決して戦って、お客様に喜んでいただける相撲を取れればいいんだ、と。まさにそれがわれわれの稼業だから。

武蔵川 そうだったんだ。思い返すと、僕が18歳で入門して1年も経たない頃、もう親方は新入幕でね。「うわー! すごいな」とずっと見てただけ。「僕もいつかあんな風になれるのかな」って。

大関時代にNFLからスカウト

貴乃花 相撲経験がなかったのに、マルちゃんは相当強かったから。ボンポンポンと上がって来て、気づいたら三役で。巡業先で稽古した当時の関取たち、皆おののいてたよ。もし相撲をやってなくてアメフトをやってたら、絶対に世界的な一流の選手になっていたと思うけど。

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武蔵川 確かに大関時代に、NFLがアメリカからわざわざスカウトに来たよ。でも「行きません。日本に残ります」って言ったの。いとこがNFLにいるんだけど、2年契約で36億円だよ。アメフトはなんでも金で動く。でも、相撲はね、やっぱり好きにならないとできないよ。相撲に愛があるから、僕は相撲界に残った。金じゃないんだ。相撲に対する愛がなかったら、とっくに辞めてアメフト行ってるよ。それぐらいの気持ちがないとできないんだ、力士という仕事は。

貴乃花 本当にそう。マルちゃんの言う通り、愛がなかったら、僕もとっくにいなくなっていたかもしれないな。そのマルちゃんの気持ちは若いカ士にぜひ伝えたいよ。

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