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2021/05/20

source : 文藝春秋 2013年12月号

genre : エンタメ, スポーツ

土俵に上がれば地位も関係ない

貴乃花 たとえば横綱の顔を張りにいくのは失礼だとか、いつも議論になっちゃうけど、それ自体がよくないことでね。ひとつの技として考えたら、土俵に上がれば地位も関係ない。だから張られた横綱は、相手をとっつかまえてでも簡単に料理してやる。「相手にしないぞ」っていうのも横綱相撲なんだよね。

武蔵川 綱取りが期待されている稀勢の里については技術的なことはいろいろあるけど、もう、それよりもまず「ハート」の問題だな。「俺は緊張してる」って顔に出て、わかりやす過ぎる。

貴乃花 われわれが相手だったら、そこを読み取って攻めて行くところだからね。上に立つ者は常にポーカーフェイスじゃないと。

武蔵川 今は、横綱がずっと独走して13日目、14日目にやっと一番負ける感じ。その前に、誰かが横綱に土つけてれば、15日間が面白くなるのに。相撲ファンもそれが見たいんだ。13日目に優勝が決まってるようだと、「あとは国技館行かないで家で見てるわ」って、みんな言うよ。

貴乃花 当時の三役や前頭上位は、「この形になったら横綱でもかなわない」という力を、みんなそれぞれに持っていたけどね。だから当然、横綱もいつも以上に稽古して、毎場所向かって行かないといけなかった。

武蔵川 今は学生出身も多くて、「サラリーマンみたいな力士が多くなった」なんて言われてるらしいけど、失礼だよ。世の中のサラリーマンのほうが頑張ってる(笑)。

©文藝春秋

若い親方たちの新しい考え方をもっと取り入れるべき

――現役力士に厳しい声を向ける二人は相撲協会の今後にも、改革が必要だと声をそろえる。

貴乃花 親方稼業となっても、われわれ同世代の親方たちには、目には見えない絆があるよね。特にマルちゃんとは、優勝回数じゃなくて、言ってみれば「人生の優勝戦線」をお互いに戦い抜いたという絆があり、強み。今までは土俵上で一人で戦っていたけど、これからは相撲界としてのチームワークが発揮できるかもしれない。ひょっとしたら、協会内部の役職や要職に関係なく、チームワークを結集して、やっていける時代が来るのかも。

武蔵川 若い親方たちの新しい考え方を、もっと取り入れたほうがいい。「デスクでコーヒー飲みながら、100年前の相撲の話をしててもダメなんだ。「定年まであと1、2年だから」と先送りするんじゃなくてね。今の相撲界では、その1、2年がすごく大きい。先輩たちが動いてくれて次世代にパスしてくれたら、次の人たちが動きやすいんだもの。

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