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プロが実践している備え方を伝授

終活はまだ先のことと考えていると、いざという時に家族や周囲が困ることになる。「お金の終活は若いうちから始められる」とファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは話す。畠中さん自身、今を楽しみながら終活も意識した資産管理を実践しているそう。将来も安心のお金の備え方とは——。

3か月に一度更新する「貯金簿」を活用

——畠中さんはお金の終活をされていますか。

畠中 遺言はまだ書いていませんが、万が一の際に家族が困らないように準備はしています。大きな柱になっているのが、30代から実践している”貯金簿”です。大学ノートに今保有している金融商品や住宅ローンの残高を書き記し、3か月に一度更新していくだけで、さほど手間はかかりません。終活としてエンディングノートを用意したものの、「書いて終わり」の人が多いんです。けれど40代、50代、60代と人生のステージが変化していくにつれて、資産状況は変わっていくのが当たり前。その点、貯金簿は、資産をある時点で切り取るのではなく、過去から現在までの推移を把握できます。それがわかればお墓の購入やお葬式なども含めて終活の計画を立てやすくなりますし、万が一の際は遺言の「財産目録」としても活用できます。また、貯金簿であれば、貯蓄型保険をいくら積み立てたかも見えるうえ、住宅ローンなどの負の資産、いわゆる借金の推移も一目瞭然。いずれは遺言やエンディングノートを用意しようと考えているなら、貯金簿を付けておくと便利ですよ。

貯金簿の例
貯金簿の例

——なかなか継続できないという方にアドバイスをお願いします。

畠中 私は収入が変動するので3か月に一度更新していますが、給与所得の方であれば更新頻度は半年に一度でも問題ないでしょう。貯蓄が増えた、ローンが減ったということが目に見えるとそれが励みになります。ファイナンシャルプランナーなのに家計管理が苦手な私でも20年以上継続できていますから、大丈夫です(笑)。

親の終活にも早いうちに向き合う

——相続やお墓などの希望はどのように伝えているのですか。

畠中 実は、貯金簿と合わせて「補足ノート」も準備しているんです。こちらはもしも私が急に倒れた際に、お金に関する手続きで「何を」「どの順番で」やってもらいたいかを記したものです。例えば株式の名義変更はどのように手続きするか、不動産投資の納税資金はこの口座に遺したお金で納めて……といったように、家族が読むことを念頭に、図解も含めて説明しています。このノートにお墓の希望も記すつもりです。

 現在はお墓が多様化していて、納骨堂に樹木葬、海洋散骨などさまざまなスタイルがあります。生前に自分で希望を固めておくことが、家族への配慮になります。相談を受ける中で親御様が急に亡くなられ、残されたご家族がお墓の用意などで困ってしまったケースをたくさん見てきましたからね。例えば、お母様が「夫と一緒のお墓には入りたくない」と言い残して亡くなったものの、ならばどんなお墓がいいのかはわからない、というお悩みはよくあります。親が亡くなった際に大変な思いをした人は、同じ苦労を子どもにはかけたくないと早めに準備しています。

——親の終活にも向き合わなければなりませんね。

畠中 相続や介護など、親の老後設計は自分自身の老後や終活にも関わってきます。遠慮して親に終活の話題を出せない方がいますが、思い切って切り出してみるとスッキリしますよ。私自身、離れて暮らす母親と要介護になった場合の対応を話し合い、いざという時は住み替えてもいいという意向を確認しました。年齢を重ねて認知症などで判断能力が低下すると、さまざまな対応が難しくなります。

感謝の思いをお金に託す遺贈を視野に入れる

——子どものいない夫婦や、おひとりさまの場合はどのように準備すべきでしょうか。

畠中 埋葬やお葬式の手続きなどであれば、死後事務委任サービスを生前契約して利用する方法もあります。時代にあった便利なサービスですが、会社選びには注意が必要です。ポイントは、預けたお金が信託され、分別管理されているかどうかです。信託を利用した分別管理がなされてる会社であれば、万が一その会社の経営が悪化しても、顧客の資産は守られるので、とりあえずは安心できます。しかし分別管理ができていない会社が倒産すると、サービスを受けられないうえに、預けたお金が返金されないリスクがあります。

——相続人がいない場合のお金の上手な活用方法はありますか。

畠中 遺言を書いて遺贈するのも選択肢の一つです。元気なうちはまとまったお金を寄付することは難しいと思いますが、亡くなった後であれば思い切った寄付ができます。お世話になった地域や学校、応援したい団体などへ遺贈してみるのもいいですね。また、相続税が発生する場合は割増しになりますが、仲が良かった友人に財産の一部を贈りたいという人もいるんですよ。これからは家族以外にも、思いをこめたお金の贈り方が増えていくかもしれませんね。

——周囲のためだけでなく、自分が楽しんで「お金を使う」ために、どのような工夫をされていますか。

畠中 死ぬまでにやりたいこと、またやらなければならないことをまとめた「バケットリスト」を作って、毎年手帳に書き留めています。ただリストを眺めるだけだと現実味が薄いので、「予算」と「期限」を合わせて書いています。例えば北欧旅行に行きたいと考えているなら、そのためにいくら必要で、何年何月までに行くかを書いておく、といった具合です。期限が迫っても実行できない場合は、後ろ倒しにすればOK。貯金簿でお金の状況を把握したうえで、このバケットリストを作成すると、夢の実現がぐっと身近になります。無理をせずに、自分らしく生きるために「お金の終活」を取り入れていただければと思います。

Case Study
セキュリティ解除に20万円超のケースも! デジタル遺産の管理に注意

パソコンやスマートフォンだけで資産管理していると、亡くなった後に思いがけないトラブルが起きることもあります。実際のご相談でも、パスワードの解除などで想像以上に手間がかかったというケースが起きています。50代の女性の相談者のケースでは、夫の急死によって財産の整理が必要になったものの、夫の財産はすべてスマホ上で管理されていたため、どの金融機関に口座があるのかすらわからない状態に。結果、専門の会社に依頼して20万円以上かけてスマホのセキュリティを解除することになりました。日常的にはスマホを使いつつ、紙や別の管理方法で対策しておけばこのような万一のリスクを減らせます。(畠中さん)

【この人に聞きました!】
ファイナンシャル・プランナー
畠中雅子さん
はたなか・まさこ 「高齢期のお金を考える会」主宰。新聞・雑誌を始め、WEBなどに多数の連載やレギュラーの執筆を持つ。『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書、監修書は70冊を超える。