出世のために残業して頑張る人がいる。しかし、そういう人が出世するとは限らない。ドイツの金融機関で20年勤務した隅田貫さんは「ドイツではどんな職種でも定時になれば即帰る。最小限の時間で最大限の結果を出すことがよしとされているからだ。日本人も同じ考え方をしたほうがいい」という――。
※本稿は、隅田貫『ドイツではそんなに働かない』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
ドイツの上司が教えてくれた「その日の花を摘め」
メッツラー社(筆者が2005年から勤務したドイツ老舗プライベートバンク)の上司の机の上には、石の置物が置いてありました。
ある日、上司から「この石に刻まれている言葉の意味がわかるか」と聞かれました。
そこに彫ってあったのは「Carpe diem(カルペ・ディエム)」という文字。当時の私はさっぱり意味がわからなかったのでそう告げると、それはラテン語なのだと教えてくれました。
紀元前の古代ローマ時代の詩人ホラティウスの詩にある一句で、「その日の花を摘め」と解釈されるようです。
「その日の花を摘め」とは、今のこの時間を大切にせよ、今を楽しめ、という意味で、「課題を先送りすることなく、今取り組もう」「効率的に働こう」と解釈しているのだと、上司は話してくれました。ハードワーカーの上司らしいな、と感じたエピソードです。
アウトバーンで電話会議するドイツ流「隙間時間」の使い方
効率的に働くことに情熱を燃やすドイツでは、就業時間中は隙間時間も最大限に活用します。
欧米の映画やドラマを観ていると、車を運転するときにハンズフリーイヤフォンをつけて、取引先と会話をするようなシーンが出てきます。私もメッツラー社に入って、これを体験しました。社用車にハンズフリーの電話が装備され、アウトバーン(高速道路)を運転しながら電話会議に参加したこともあります。移動時間でも効率的に仕事ができる環境を整備する会社の方針です。