昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方, 企業

大卒の新人をたった1週間で退職に追い込んだお局職員の"ある口癖"

この施設を去るときは、北村に言いたかったことをぶちまけてやるぞ、と心の中で叫ぶ。

「僕、無理な気がします」

私は経営していた会社を畳み、この仕事に就いた。

会社を清算する際に社屋やそのほかの不動産を処分し、借金の返済に充てたが完済できず、今も分割で払い続けている。年金受給までまだ数年あり、体が続く限り働かなくてはならない。今はまだここを辞めるわけにはいかない。

「真山さん、どうしたら北村さんとうまくやれますかね」

入社4日目に彼から初めて事情を聴いてそのことを知った。彼は県外のスーパーを辞めて帰ってきたUターン組だった。介護業界もここが初めてだったらしい。

「今までも彼女から目をつけられて辞めた人間、ごまんといるからね」

言いながら自分でも答えになっていないと思った。1日で辞めたパートもいた。

「僕、無理な気がします」

私も、もう彼は無理だろうと思った。いい奴なのだが、北村のいじめに耐え抜くには、線が細すぎると思った。

「まだ若いんだから、もっといい施設を当たってみたら? 君なら大丈夫だよ」
「でも介護業界、北村さんみたいな人がどこの施設にもいるそうですね。最近ネットで調べてわかりました」
「僕もここしか知らないから、はっきりとしたことは言えないけど、多かれ少なかれ、妙な上司はいるみたいだよ。友人に介護福祉士の男がいるけど、彼の場合、5回職場を変わっているからね」
「どんな理由で、ですか」
「やはり北村みたいな上司とぶつかったり、その施設があまりにもいい加減な体質だったりで」

入居者の要求を無視する介護施設

実際、介護福祉士の友人は気まじめな男で、私が介護の世界に入る前から職場の不満をよく口にしていた。彼から、問題のある上司とか、よくない施設の話をよく聞いた。

彼が今までいた施設で一番腹が立ったのは、頻繁にナースコールを押す入居者の電源を切るように上司から指示されたことだという。つまり入居者の要求を無視するのだ。ベッドから降りる際に鳴る、足もとのセンサーマットの電源をオフにしていた施設もあったという。