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2021/05/24

捜査対象2人の告白

 だが、そうしたプロファイリングによって捜査が長期化したと、その元捜査関係者は指摘する。

「犯人像は狭まるどころか、どんどん拡大していった。あまりにも遺体が鮮やかに解体されていたため、猟師や、解剖の知識に長けた医療関係者にも捜査の網は広げられた。さらにはHさんがロシア船の入港イベントに1度だけ参加したことから、ロシアの特殊部隊関係者説まで出ていました。捜査員の“思い込み”が捜査の偏りを生み、時間がかかったとの指摘があります」

 事件発覚の翌年に私は、09年11月に捜査対象としてマークされた2人の男性に話を聞いている。

 島根県立大学大学院に通うBさんは、学業の傍ら、臥龍山を管轄とする林業の仕事に就いていた。

写真はイメージ ©iStock.com

 Hさんが行方不明となった日の深夜、彼は大学の研究室からNシステムがある道を通って自宅に帰っていたのである。

「11月後半の夜9時半頃、1人暮らしの家(広島県内)に、刑事2人が突然やってきました。刑事は私の車が10月26日の夜遅くに金城を通っていたから来たと言い、当日の行動について聞かれ、風呂場を見せてくれと言われました。あと、家にある刃物を見せるように言われました。ノコギリよりもナタや包丁を気にしていたので、鋭利な刃物が遺体の切断に使われたのだと思います」

 2人の刑事は、1日空けて、Bさん宅にふたたび姿を見せた。

「大学に何時まで残っていたのかを調べたいと言われたので、研究室でパソコンを使用した時間を話しました。パソコンを閉じた後、すぐ帰り、途中でコンビニに立ち寄ったことを説明しました。コンビニの防犯カメラに映像が残っていたようで、後日、時間的に話の辻褄が合うから問題ないとの説明を受けました」