ある薬物事件の捜査成功に警察当局が沸いている。
警視庁は6月2日、コカインを販売目的で所持したとして、麻薬取締法違反などの容疑でナイジェリア国籍のモデベル・クリス・オー容疑者(54)を現行犯逮捕した。一見よくある密売人の逮捕だが、担当記者はその薬物に注目する。
「警視庁の捜査員が六本木のビルの外階段のメーターボックス内に薬物が隠されているのを発見しました。簡易鑑定でコカイン30.5グラムと覚醒剤0.6グラムと判明。押収分全ての末端価格は約1000万円に上ります。警視庁は今回、密売人グループの元締めと見ていたモデベル容疑者を逮捕しましたが、ポイントは現行犯であること。実は、コカイン絡みの事件での現行犯逮捕は8年ぶりです」
なぜ8年も現行犯逮捕がなかったのか。それは2012~13年にかけて、コカインの誤認逮捕事件が相次ぎ、警察庁が現行犯逮捕を禁じていたからだ。
8年前と言えば、取り締まりが不十分で危険ドラッグが蔓延していた頃。危険ドラッグの中には、コカインと似た成分の薬物も存在する。警察当局が当時使っていた試薬での簡易鑑定キットではそうした薬物がコカインと間違えて判定され、逮捕後の本鑑定で覆される事例が続いていた。
「その頃は覚醒剤などに比べてコカインの検挙は極端に少ない一方、覚醒剤の簡易鑑定キットは有効だったので、捜査への影響は最小限と警察当局はタカをくくっていました」(同前)
ところが、想定外の事態が進行する。