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ソフトバンク・重田倫明投手は“育成魂”で花開くか 先輩・千賀滉大投手から学んだこと

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/12

「今までの自分を捨てるくらいの気持ちで。ただ真面目にやるだけでは変われなかった」

 今年5月、育成・重田倫明投手へのインタビューでプロ3年目の意気込みを尋ねると、それまで見たことのない表情で重たい言葉を吐き出した。

 重田投手は2018年育成ドラフト3位で国士舘大学からホークスに入団した、背番号138の右腕だ。しかし、入団からここまでまだ大きなインパクトを残すことは出来ていない。限られたチャンスで思うような結果を出せていないのが現状だ。

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大きな励みとなった先輩・千賀からの言葉

 とにかく真面目な選手だ。真面目にコツコツ取り組む姿は外から見ていてもよく伝わってくる。でも、「去年まで支配下なんて見えてもこなかった」と重田投手は現状を受け止める。何かが変わらないとこの先の光は見えてこないと実感していた。

 そんな時、手を差し伸べてくれたのはホークスのエース・千賀滉大投手だった。

 今年1月、重田投手は千賀投手らが沖縄で行う自主トレに声を掛けてもらった。真面目に取り組んでいてもなかなか上手くいかない“育成の後輩”を千賀投手は気にかけてくれていたのだ。先輩への感謝の気持ちと、これを転機にするんだという覚悟をもって沖縄へ同行した。

 千賀投手はじめ、石川柊太投手、川原弘之投手、オリックス・飯田優也投手といった育成経験のある先輩たちと自主トレで接する中で、考え方の幅も広がった。入団時、「自分はネガティブなので」と話していた重田投手だったが、物事をポジティブに考えられるようになったという。

「悔しい壁が何度もぶつかってくるんで、くじけそうになることもあるんですけど……去年だったらちょっとヤケクソになりそうだった所を、今年は踏ん張れています」

 自らの心の成長も感じていた。

 さらにこんな言葉も口にした。

「この世界は真面目にやったもん勝ちじゃない。結果出したもん勝ちなので」

 スピードも変化球も突出したものはないからこそ、結果を出さないと見てもらうことすら出来ない。そう思ってより一層、重田投手は結果を意識してやってきた。

 さらに千賀投手から「このチームで這い上がるには、日本代表になるくらいのつもりじゃないと」とハッパをかけられた。千賀投手自身が、育成時代にそういう想いでやってきたそうだ。ホークスというチームで自分の場所を掴むのはそう簡単なことではない。気持ちも、取り組む内容も並大抵ではたどり着けない。育成から支配下登録を勝ち取り、本当に日本代表にまで駆け上がった先輩の貴重な声は、重田投手にとって大きな励みとなっていた。

重田倫明 ©上杉あずさ
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