文春オンライン
「自分たちができることを」…ミャンマー人女子が日本でフットサル大会を開いた理由

「自分たちができることを」…ミャンマー人女子が日本でフットサル大会を開いた理由

ミャンマーは「世界2位の寄付大国」

2021/06/20
note

 梅雨入り直前の6月13日、東京・豊洲のフットサル場に異国の女子たちの声が響いた。頬にミャンマー国旗のシールをつけてボールを奪い合い、ときにはげしくぶつかりあう。ふだん柔らかで控えめなミャンマー女子とは思えない迫力だ。みんな「フットサルなんて初めて」と言ってた割に、ちゃんと試合になっている。ミャンマー人の観衆からも1プレーごとに拍手が送られる。

 公式ルールより短めの10分間を走り抜いて、ピッチの外に帰ってきたのはナン・シャン・カンさん(32)。

「暑くてタイヘン」

ADVERTISEMENT

 と言いながらも表情は晴れやかだ。

フットサル未経験ながらも健闘したナン・シャン・カンさん

1万8000円の協賛金を支払って参加

「サッカーなんてミャンマーでもやったことない。練習は3週間前にちょこっと、あと今日の午前中」

 なんて笑うが、この日ばかりは勝敗は問題じゃないのだ。

 参加チームはそれぞれ1万8000円の協賛金を支払う決まりだ。それに、ひとりひとりがまた別途、寄付をする。加えて募金箱を持って回り、日本人やミャンマー人の見物客にも善意を募る。こうして集まったお金を、コート使用料を差っ引いて、すべてミャンマーに送るのだ。

彼女たちはふだんから母国のために寄付などを行っているそうだ

 2月に軍事クーデターが発生して以降、混乱の続く母国を助けたい。帰国できないいま、海外在住の自分たちができることをしたい。軍の弾圧で家を失い避難民となった人々や、経済活動がストップしているため困窮している人々に少しでも助けになればと企画した、いわばチャリティー・フットサルなのだ。

「それに、ストレス解消にもなるし(笑)」

 と誰もが楽しそうだ。母国の苦境を日本から見つめるばかりで、ふさぎこむような毎日が続く中、いくらかはすっきりできたようだ。