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竜王戦で“仲良し同世代”とぶつかる八代弥七段は「三枚堂君からはパッタリ連絡がなくなった」

竜王戦で“仲良し同世代”とぶつかる八代弥七段は「三枚堂君からはパッタリ連絡がなくなった」

八代弥七段インタビュー「友情と焦燥」 #1

2021/07/01
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 竜王戦本戦トーナメントが開幕した。注目の対局の1つが、2組2位の八代弥七段と、3組優勝の三枚堂達也七段の同学年ライバル対決だ。八代七段は1993年度(1994年3月)生まれ、同学年には斎藤慎太郎八段、高見泰地七段など棋士が7人いる。1学年上には永瀬拓矢王座、石井健太郎六段など4人、1学年下には佐々木勇気七段など7人と層が厚い世代だ。

 今回のインタビューの主なテーマは「同世代」。インタビュー前半では、間近に控えている竜王戦本戦への意気込みや、高見泰地七段との奨励会時代からのライバル関係について聞いてみた。(全2回の1回目・後編を読む)

八代弥(やしろ・わたる)七段 静岡県東伊豆町出身。1994年3月生まれ。青野照市九段門下。2005年9月、奨励会入会、2012年、18歳で四段。2017年、1次予選から勝ち上がった朝日杯将棋オープン戦で優勝。これにより六段昇段。2019年、竜王戦3組ランキング戦で準優勝し、2期連続昇級により七段。

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対局が決まると連絡を取らないのは、あうんの呼吸で

――三枚堂七段とは、同学年で仲良しと言われます。竜王戦では、互いに七段昇段をかけた2年前の3組準決勝でも当たっていますね。

八代 準決勝まで勝ち進んだことに加え、自分のみならず相手も七段昇段がかかった対局で、相手はライバルの1人だと思っている三枚堂君ですから、かなり意識して「絶対に負けちゃダメだ」と思いました。そこは勝って自分が先に七段昇段できたのですが、3組決勝では負けて本戦には出られませんでした。今期が初めての竜王戦本戦トーナメントです。

――今期の竜王戦本戦トーナメントでは、初戦で八代―三枚堂戦になりました。そういう大きな対局の前、仲の良い関係は変化するのですか。

八代 三枚堂君と、再び竜王戦で大きな勝負になったのは運命的というか、より頑張ろうと思える相手との対局となり、ありがたいことだと思っています。自分が先に2組2位で本戦進出が決まり、しばらくして三枚堂君が3組で優勝して、本戦で対戦することが決まりました。そのとたん連絡はパッタリと来なくなりました。

 別に仲が悪くなったわけではない。対局が決まると連絡を取らないのは、あうんの呼吸で、お互いに頑張ろうみたいな意味もあります。彼も多分、同じように思っているのではないかな。本戦に出られるのはチャンスなので、まずは初戦に勝たなければ始まらないと思っています。

竜王戦ランキング戦3組で優勝した三枚堂達也七段 ©️文藝春秋

――竜王戦は1組に到達しました。得意な棋戦でしょうか。

八代 竜王戦は上がりやすく落ちやすいのが特徴です。(ランキング戦と昇級者決定戦で)連敗したら、すぐ降級です。落ちるというのはすごい恐怖。自分が上がっている分、誰かが落ちているわけです。3組に上がったあたりでそんなことを意識するようになり、落ちたくないという意味で力が入った面はあるかもしれません。1組まで上がって、本戦に出やすくなりましたが、落ちないようにというプレッシャーもあります。ただ、どの棋戦も同じように力を入れたいと考えています。