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【第一部】 金融特集 幸せな未来のための資産運用

大きな調整局面が警戒されつつも、足元の金融市場はいまだ高値圏にある。いま資産運用について注意すべき点はなんだろうか。またこれからの資産運用はどのような心構えを持つべきか。有識者に話を聞くとともに、いま考えたい金融商品やサービスを紹介する。

ファイナンシャル・プランナー 藤川 太さんに聞く
本格的な「コロナ後」の資産運用は分散投資によるリスク管理が重要

2020年3月のコロナショック以降、世界の金融市場は急速に回復している。この相場がこのまま続くのか、下落に転じるのか気になるところだ。本格的な「コロナ後」に向けて資産運用にどう取り組めばいいか。ファイナンシャル・プランナーの藤川太氏に聞いた。

金融市場には大きく4つの局面がある

ファイナンシャル・プランナー
生活デザイン代表取締役
藤川 太氏
ファイナンシャル・プランナー
生活デザイン代表取締役
藤川 太

 コロナ禍からの本格的な経済回復が期待されているいま、資産運用で失敗しないためには、相場の大きな流れをつかんでおくことが大切だ。ファイナンシャル・プランナーの藤川太氏は「金融市場は、概ね4つの局面を繰り返していることを知っておくべき」と話す。それは①金融相場、②業績相場、③逆金融相場、④逆業績相場だ。景気後退の兆候が見えると、中央銀行は金利引き下げなどの金融緩和で資金の流動性を確保しようとする。ダブついた資金が株式市場などに流れ込んで株高になった状態が金融相場だ。金融緩和がしばらく続くと企業にも資金が回り、業績が好転することで業績相場に移行する。

 しかし、景気が過熱しすぎると急激な物価上昇などで消費者の生活を脅かす可能性がある。中央銀行は金利の引き上げなどの対策を講じる。これにより株式市場から資金が流出し、株価が下がり逆金融相場となる。その影響が企業に及ぶと企業業績が低迷し、逆業績相場が訪れる。下落リスクを抑制しながら安定的に資産をふやしたいのであれば、現状がどの段階なのかを把握する必要がある。

日本株だけでは資産を増やせない可能性あり

「現在の日本は金融相場から業績相場に移行する途中と見ていいでしょう。ただし、業績相場はそう長くは続かないかもしれない」と藤川氏。というのも、多額の政府支出を伴ったコロナ禍においては、景気が好転すると「復興増税」が打ち出されている可能性が高いからだ。そうなると、株価の下落も想定される。そんなときこそ、投資対象や地域を分けた分散投資がより重要になる。「当社に家計相談に訪れる方もそうですが、日本株に資産が偏っている個人が多い」と藤川氏はいう。日本で暮らしているから、日本のことはよくわかっている。よくわからない海外に投資するより、日本に投資した方が安心だという理屈だろう。しかし、日本株に投資して利益を得るには、日本経済が成長する必要がある。「10年先、20年先に日本が豊かになっていると思いますかと尋ねると、それは難しいでしょう、と答える人が大半です」(藤川氏)

 経済成長が期待できないのに、日本株へ集中投資して利益を期待するのはあまり合理的な判断とはいえない。もちろん、個別に見れば成長する企業もある。優れたアクティブファンドであれば、日本株への分散投資で利益を得ることも可能だが、市場全体の値動きに連動するインデックスファンドで高い利益を追求するのは難しいかもしれない。そうなると、海外にも目を向けて分散していく必要がありそうだ。ただ、リーマン・ショック以降は、世界中の相場が連動しやすくなり「分散しても意味がない」という意見もある。藤川氏は「確かに各資産の連動性は高まっていますが、それでも下落リスクを抑制するためには依然として、分散投資は有効です」と話す。

ロボアド投資や運用の専門家の活用も検討

 手軽に国際分散投資を実現するには、ロボアドバイザーを使ったロボアド投資も有効だ。堅実な資産運用には確率統計的な判断が必要になるが、その点では人間よりもむしろロボットの方が優れているかもしれない。「人間には感情がありますから、相場が大きく動くと動揺して判断を誤ります。ロボットはどんなときにも数字に基づいて冷静な判断をしてくれる点がメリットです」(藤川氏)

 資産運用の専門家の力を借りるのがよいケースもある。たとえば高齢者の場合、数ある金融商品の中から自分に最適なものを見極めるのが難しくなることもあるだろう。そんなときは気軽に相談したり、運用を任せられたりする金融アドバイザーがいると安心だ。

 実際に運用を始める際には、一攫千金を狙うのではなく、段階を踏んで実行する必要がある。「まずは、家計を見直してムダを省き、積立投資に回せる資金を捻出してはどうでしょう」(藤川氏)。その上で分散投資でリスクを管理しながら、長期の構えで運用したい。