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【第二部】 相続特集 幸せな未来のための相続対策

人生100年時代といわれるいま、自分亡き後の財産の振り分け方については、元気なうちに考えておきたいものだ。認知機能が低下してからだと、たとえ自分の財産であっても管理するのが困難になる恐れがある。これからの相続対策のあるべき姿について家族で一度話し合ってはどうだろう。そんなときの頼れる味方になってくれそうな商品・サービスを紹介する。

ファイナンシャル・プランナー 藤川 太さんに聞く
「まだ時間はある」では手遅れに 相続対策には信託の仕組みを活用

まだ元気だから大丈夫だろう――。そう考えて相続対策を後回しにしている人は多い。しかし、認知症などを発症すると対策は難しくなってしまう。家族や周囲に迷惑をかけないための相続対策には何が必要か、ファイナンシャル・プランナーの藤川太氏にアドバイスしてもらう。

増える高齢の単身世帯 社会問題化しつつある

 日本は少子高齢化が進む中で、高齢者の単身者が増加している。ひと口に単身者といってもさまざまなパターンがある。配偶者がいてもいずれはどちらかが先立ち、残されたほうは単身者になる。子どもがいても離れて暮らしていれば、親はいずれ実家でひとり暮らしになることも多い。

「高齢者の単身世帯は、すでに社会問題化しているといえるかもしれません」とファイナンシャル・プランナーの藤川太氏は指摘する。不安の一つは判断能力が衰えたときの財産管理だ。最近はコロナ禍の影響で帰省もままならなくなり、「気づかないうちに親の認知機能が低下していた」という事態も起こりうる。

 認知症を発症した場合、成年後見制度を利用するケースがある。家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、財産管理をしてもらうわけだ。そうなると家族であっても勝手に預金の引き出しなどができない。「それでは不便なので、しばらく前から話題になっているのが家族信託です」(藤川氏)

 元気なうちに財産管理を任せる相手(受託者)を決めておき、実際に判断能力が衰えたときには、受託者が本人に代わって財産を管理する方法だ。

 高齢になると金融詐欺の被害にあうリスクも高まる。日本では個人金融資産の大半を60歳以上の退職世代が保有しており、そもそも詐欺のターゲットにされやすい。家族信託を利用していれば、詐欺被害に遭うリスクを低減することができる。

親の財産管理を家族で見守る仕組み

「家族形態やニーズの多様化によって、信託銀行では、さまざまな信託商品・サービスを提供するようになりました。人によっては検討してもいいでしょう」と藤川氏。例えば、本人が認知症や入院などで財産管理が難しくなったとき、あらかじめ指定した代理人が預金の引き出しや支払いなどを代行できる信託商品もある。親のお金がどう使われたか、家族で共有できる機能もあるので、相続時のトラブル防止にもつながるという。

 遺言信託は、遺言書の作成から遺言書の保管、遺言の執行まで相続に関する手続きを代行してくれるサービスだ。最近では、遺言で資産を受け取った配偶者が相続後に安心して暮らせるように開発された信託商品も登場している。

 子どもがいない単身者の場合、老後の不安はさらに大きくなる。例えば、病気の治療で入院が必要になった場合に、保証人や身元引受人が必要になる。老人ホームに入居する場合も同じだ。「身元保証サービスを提供する金融機関等も増えているので、早めに確認しておいた方がいいかもしれません」(藤川氏)

単身者の終活を支援する商品も

 単身者の終活をサポートしてくれる信託サービスもある。契約者が亡くなると、事前に希望した親戚や友人・知人などへの訃報の連絡から、葬儀や納骨、埋葬の手続きまで代行してくれる。ペットと暮らしている場合には、「自分が亡くなった後も天寿を全うして欲しい」と考えるものだ。その場合には、生前に引き取り手を決めておき、確実に引き渡してもらうことも可能だ。

 財産を引き継ぐ相手がいないのも悩みだ。何も準備しないまま相続が発生すると、資産は国庫に納められる。「自分亡き後、遺産を有効に使ってほしいという思いから、寄付を検討する方も増えています。財産処分は人生最後の権利行使として、前向きに寄付先を考えるといいでしょう」(藤川氏)

 寄付や遺贈を利用すれば、自分が亡くなった後も資産を生かすことができるわけだ。今後、社会がどうなって欲しいかを考えて、それを実現してくれる団体などに寄付をする契約を生前に結んでおくといいという。

「多くの人は『まだ時間はある』と考えて、なかなか対策を講じませんが、認知症も相続もいつ起きるかわかりません。元気なうちに考えておくことが何よりも肝心です」と藤川氏は強調する。いざというとき、のこされた家族や周囲に迷惑をかけないためにも、早めに検討してはどうだろうか。