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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

北九州監禁連続殺人事件 緒方純子が虐待の恐怖によって逃走した「門司駅事件」とは

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #61

2021/07/13

genre : ニュース, 社会

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第61回)。

北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

緒方の単独殺人だと親族に信じ込ませ…

 緒方純子が逃走先の湯布院(大分県)から、松永太のいる福岡県北九州市の「片野マンション」(仮名)に連れ戻されたのが1997年4月15日のこと。

北九州市 ©️小野一光

 それからも松永は、同県久留米市に住む緒方の父(孝さん=仮名、以下同)、母(和美さん)、妹(智恵子さん)を2、3日おきに呼び出しては、殺人に手を染めた緒方を今後どうするかについての話し合いをさせた。

 そこで決まった事柄について、後に福岡地裁小倉支部で開かれた公判での判決文(以下、判決文)は次のように明かしている。

〈孝、和美及び智恵子をして、「松永は、殺人という重い罪を犯した緒方を匿って面倒を見、時効成立まで逃走させる。緒方一家は、松永に対し、指名手配中であるため表に出られない被告人両名(松永と緒方)の生活費等を負担し、松永が緒方を匿い警察から逃走させるための『知恵料』、『技術料』を支払うとともに、松永の指示に従い協力する。」などと取り決めさせた〉

 つまり松永は、監禁していた広田由紀夫さん(仮名)、さらには大分県の別府湾で“自殺”した末松祥子さん(仮名)について、いかにも緒方が単独で殺害したかのように、彼女の親族に信じ込ませ、時効まで犯行の隠ぺいに必要との名目で、カネを得る流れに持ち込んだのである。

 そこで松永は「松永が緒方の面倒を見る契約締結料」の名目で金銭を要求した。4月22日に孝さんは額面300万円の手形を担保に、久留米市農業協同組合(JAくるめ)から約290万円を借り入れ、それを松永に渡している。

 さらに4月のうちに、松永は孝さんに証拠隠滅のために必要だと命じて、由紀夫さんの遺体を解体した「片野マンション」の台所の配管を交換させた。これにより、孝さんは自分の娘を庇うためとはいえ、殺人事件の証拠隠滅工作に加担したという負い目を背負わされることになった。