「どの国の賓客も平等に、最高のもてなしで」
皇室は「どの国の賓客も差別せず、平等に、最高のもてなしで遇する」との原則を堅持している。これは世界でもまずない。米ホワイトハウスでも、英バッキンガム宮殿でも、仏エリゼ宮でも、はたまた中国の中南海でも、「自国との関係性においてもてなしの軽重を決める」のはふつうのことだからだ。それだけに皇室の原則を知った人は驚く。実際にアフリカの小国の元首であっても、宮中晩餐会では大国の元首と同様に、最高の料理と、最高レベルのフランスワインでもてなされる。
昭和天皇の「大喪の礼」の時は、コトの性格上、皇室は饗宴をもたなかったが、明仁天皇、美智子皇后はすべての外国の元首と使節に会われ、あいさつされた。外務次官として現場を指揮した村田良平氏(故人)は参列した外国の賓客の反応についてこう書いている。
「各国代表の中には、両陛下の式場での堂々たるお振る舞い、特に雨中自ら傘を差しながら毅然として起立しておられたことに深い敬意を覚えたと述べると共に、いかなる国をも差別することなく全弔問使節にお声をかけるための時間を割いてくださったことに衷心より感謝していると述べる者が少なくなかった」(『回顧する日本外交』)
同じ立憲君主国でも皇室と他の王室ではたたずまいが相当に異なる。誰をも平等に遇するもてなしもそうだが、質実で堅実な皇室の暮らしぶりや、歴代の天皇、皇后のうわべだけでない賓客との真摯なやりとりなどに、日本人のありようを見る外国の賓客は少なくない。「慰霊の旅」の時、宗教を越えた祈りの姿を見た外国人もいる。欧州やアラブの王族は自国産品の売り込みのキャンペーンに代表団を率いて外国を訪問するが、皇室ではそういうことはあり得ず、皇室が独自のスタイルを保持してきたことは間違いないだろう。
(後編に続く)
その他の写真はこちらよりご覧ください。
