文春オンライン

《追悼》タフで優しい“地上最強の男”アクション俳優・千葉真一が残したもの

2021/08/20
note

 我が国の元祖・アクション俳優・スターの千葉真一さんが去る8月19日に亡くなった。享年82。死因は新型コロナによる肺炎ということでなんともいたたまれない。

 ご子息は、今活躍中の新田真剣佑さんに眞栄田郷敦さん。娘も女優の真瀬樹里さん。もっと言えば、大女優の野際陽子さん(2017年に逝去)が元妻と絵に描いたような芸能一族。海外ではサニー千葉のニックネームで親しまれ、千葉さんの大ファンというアメリカの監督、クエンティン・タランティーノからのラブコールで映画『キル・ビル』(2003年)に服部半蔵役(剣術指導も兼任)で出演したり、その人気は母国日本にとどまらず。まさに国際的大スターだ。

 子供の頃の自分にとって“千葉真一”は間違いなく、ジャイアント馬場やアントニオ猪木、空手の大山倍達らに並ぶ“地上最強の男のひとり”だった。そんな最強の男がまさか、新型コロナで亡くなるとは……。これまでの訃報とはまた違う哀しみが胸にこみ上げてくる。

ADVERTISEMENT

千葉真一さん ©AFLO

「アクション俳優と呼ばれる以上は、自らやらないとウソになる」

 昭和42(1967)年生まれの筆者が初めて千葉さんを意識したのは、TBS系で毎週土曜夜9時に放送されて大ヒットしたアクションドラマ『キイハンター』(’68~73年)だった。

 千葉さんの役は国際警察特別室特殊スタッフのひとり、風間洋介。第161・162話で千葉さんは、石川県小松市を走る列車(尾小屋鉄道)の上でアクションを披露。視聴者の度肝を抜いた。

 後年、このときのお話を伺ったところ、「あのときは文字通り体当たりでね。何せ僕以外にあんなことはできないわけだから(笑)。でも、僕が日体大(日本体育大学)出身だったからできたことで。このときに、やっぱりアクション俳優と呼ばれる以上は、吹き替えやスタントを使わずに自らやらないとウソになる。そう思って僕のように、自分でアクションもこなせる俳優をこの日本にも育てなきゃと思って。この撮影の前後(編注:結成は’70年4月)にJACを作ったんですよ」と、ご自身主宰のアクション俳優養成事務所、JAC = ジャパン・アクション・クラブ誕生の経緯と信念を語られた。