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115億円相当の土地を「29万円」で…三宮再整備の裏でこっそり進行している“神戸市の禁じ手”

歪んだ復興 #2

2021/09/01

 高層階所有者との約30年に及ぶ訴訟が原因で、神戸・三宮の“玄関口”にあるにもかかわらず、神戸市の進める「三宮再整備」から取り残された商業ビル、さんプラザ。

 だが、ビルを管理する市の外郭団体、神戸サンセンタープラザ(以下「サン社」)は、訴訟相手をビルから「排除」するために、元「地上げ屋」の手を借りるという、同市のコンプライアンス条例に抵触しかねない“禁じ手”に及ぶのだ――。(集中連載第2回/#1から続く

「さんプラザ」ビル。かつては10階建てだったが、現在は6階までしか存在しない。奥に見える19階建てのビルは「センタープラザ」、その奥が「センタープラザ西館」。(著者撮影)

室氏が実行した“債権譲渡”のスキーム

 1995年の阪神・淡路大震災で、さんプラザの8階部分が圧壊し、7~10階部分が解体撤去されたことは前回述べたが、現存する6階を含む高層階の「土地」の所有権は、旧来の所有者だった「大倉産業」(#1参照)が2000年に破産した後も、登記簿上、同社名義になっていた。

 そこに目をつけた元「三正」常務で、「酒田短大・中国人留学生大量失踪事件」の中心人物だった室鋭三郎氏(#1参照)はまず、破産した大倉産業の「利害関係人」になることを画策。サン社に対し、同社が大倉産業に保有する債権の譲渡を持ちかけたのだ。

 室氏の求めに応じたサン社は2013年10月、「阪神・淡路大震災で倒壊した7~10階の解体撤去工事で生じた」とする、大倉産業に対して保有する債権「約929万円」の一部を、室氏が実質的代表を務める「有限会社MURO」に、300万円で譲渡した。

 この債権譲渡によって、大倉産業の利害関係人となった室氏は翌14年4月、同社が所有する、さんプラザ高層階の「土地」を入手するため、大津地裁に対し、「清算人選任申立て」を行う。既に破産した法人から、残った財産の譲渡を受けることなどを目的に、新たに清算人を立てる、いわゆる「清算人のスポット運用」という手法である。

サン社が大倉産業に対して保有する債権「約929万円」の一部を、「有限会社MURO」に、300万円で譲渡した際に両者の間で締結された「債権譲渡契約書」(著者撮影)

担当課長から送られた“異例の行政文書”

 大津地裁に提出した「清算人選任申立書」の中で、室氏は〈申立人は,(中略)「さんプラザ」の建替えに関し,さんプラザの管理者である株式会社神戸サンセンタープラザに助言等を行っている不動産会社であり〉と、さも、サン社の公式なアドバイザーであるかのように主張しているのだが、実は、室氏に利用されている、いや、彼を利用しているのはサン社だけではなかった。

 同じ「清算人選任申立書」の中で、室氏は〈神戸市としても,(中略)申立人によるこれまでの取り組みについて高く評価するとともに,申立人提案による本件スキームを足がかりとしたさんプラザを含む三宮駅南地域の再々開発の実現について,神戸市も賛同を示すとともに今後の開発についての協力及び積極的推進を確約している〉と主張しているのだ。