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2021/09/01

室氏を直撃すると……

 つまり室氏の狙いは、単に「大倉産業を排除する」ことではなく、来たる「さんプラザ再整備」の日に備え、かつて大倉産業が所有していた同ビル敷地の33.63%にあたる土地持ち分を取得し、再開発の主導権を握ることにあったのだ。

 さすがは、かつて東京で猛威を振るった地上げ屋「三正」の元常務らしい手際の良さだが、一連の事実関係を確認するため、室氏を直撃したところ、彼はこう答えた。

「(所有権確認請求訴訟などの)係争中につき、現段階ではコメントを差し控えますが、最高裁で(室氏の所有権を認める)判決が確定すれば、改めてお話しさせていただきたいと思います」

 室氏からは勝訴への自信と、さんプラザを必ずや自らの手中に収めるという強い意志が伝わってきた。だが、この室氏の手法に対し、「排除」された側の大倉産業関係者は猛反発し、さんプラザをめぐって、さらに新たな紛争が生じようとしている。

「約929万円の債権」を巡るさらなる疑惑

 これらの紛争の、そもそもの発端となったのが、前述のサン社による有限会社MUROへの債権譲渡だが、サン社は何かやましい事でもあるのか、債権譲渡翌月の13年11月に室氏から振り込まれたはずの300万円を、8年近く経った今でも会計上、「未収金の回収」ではなく、「預かり金」として処理し続けているというのだ。

 だが、そもそも元「地上げ屋」と手を組み、訴訟相手である高層階所有者を「排除」するという行為は、神戸市のコンプライアンス条例に照らし、問題はないのか。サン社、神戸市に見解を質そうと取材を申し込んだが、彼らは一様に、所有者との訴訟の「係争中」を理由に、拒否した。

神戸市役所 ©AFLO

 この件に限らず、「係争中につき……」とは、全くもって便利な逃げ口上だが、神戸市は、前述の担当課長が発出した13年8月29日付の行政文書や、15年1月27日の区分所有者理事会での発言についてのみ、文書で次のように回答した。

〈文書を見る限り、相手方からの何らかの質問に対して、直ちに再整備を進める計画のないことを回答した内容であり、また、ご指摘の記述(〈敬意を表します〉)は、儀礼的な文言であって、本市の特別な意思が入っているものではありません。

 ご指摘の(理事会での)発言は、議案についての所感を述べたに過ぎないものと考えます〉(都市局都心再整備本部都心三宮再整備課)  

 またサン社は、これまでの高層階所有者との訴訟の中で、有限会社MUROへの債権譲渡について、「区分所有者の財産でなく、(サン社)独自の債権なので、区分所有者集会や理事会の承認を受けなくとも、問題はない」などと主張している。

「さんプラザ」の6階部分。1995年1月17日の阪神・淡路大震災発生当日のままの姿で残されている。ある意味、「震災遺構」といえるだろう。(著者撮影)

 サン社によると、この「独自債権」は前述の通り、「阪神・淡路大震災で倒壊した7~10階の解体撤去工事で生じた、大倉産業に対して保有する債権約929万円の一部」とのことだった。

 ところが、である。私が過去に遡って調べたところ、この「約929万円」自体が、震災直後のドサクサ紛れに、サン社によって捏造された“架空債権”である疑いが濃厚なのだ。

 そして、この“架空債権”の取材を進めるうちに私は、25年前、地元紙「神戸新聞」の記者時代に遭遇し、当時の神戸市民の多くが衝撃を受けた、ある「事件」に引き戻されたのだった。

#3に続く

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